おの)” の例文
第五番に、檜扇ひおうぎ取って練る約束の、おのがお珊の、市随一のはれの姿を見ようため、芸妓げいこ幇間たいこもちをずらりと並べて、宵からここに座を構えた。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やまには木樵唄きこりうたみづには船唄ふなうた驛路うまやぢには馬子まごうた渠等かれらはこれをもつこゝろなぐさめ、らうやすめ、おのわすれて屈託くつたくなくそのげふふくするので、あたか時計とけいうごごとにセコンドがるやうなものであらう。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
山には木樵唄きこりうた、水には船唄ふなうた駅路うまやじには馬子まごの唄、渠等かれらはこれをもって心をなぐさめ、ろうを休め、おのが身を忘れて屈託くったくなくそのぎょうに服するので、あたかも時計が動くごとにセコンドが鳴るようなものであろう。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)