憐愍あはれみ)” の例文
じつと松太郎の寝姿を見乍ら、大儀相に枕頭まくらを廻つて、下駄を穿いたが、その寝姿の哀れに小さく見すぼらしいのがお由の心に憐愍あはれみこころを起させた。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
わたしの爲に祈つてくれ、おきなびた水松いちゐの木よ、憐愍あはれみ深き木、わたしの悲しい心のよろこび
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
しかしわれはひときずつそこなやからとはちがふ。幼児をさなごき、あしち、しばつて、これを曝物さらしものに、憐愍あはれみ悪人あくにんどもが世間せけんにある。さればこそいまこの幼児等えうじらて、心配しんぱいいたすのだ。
平次の心には、この不幸な男に對する憐愍あはれみが、油の如くにじむ樣子でした。
我心、君もし知らば、『憐愍あはれみ』のいかで堪ふべき
其都度、私は左右かにかくと故障を拵へて一緒に遊ぶまいとする。母は憐愍あはれみの色と悲哀かなしみの影を眼一杯に湛へて、当惑気に私共の顔を等分に瞰下みおろすのであつたが、結局矢張私の自由わがままとほつたものである。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
いと深き憐愍あはれみ垂れさせ給へよと、いのりをろがむ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
まづ憐愍あはれみを、かの君に乞ひ得たるのち
歌よ、ねがふは (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
いと深き憐愍あはれみ垂れさせ給へよと、いのりをろがむ
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
憐愍あはれみふさの血に赤くそまつた尊い荊棘いばら
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)