“急(にはか)” の例文
ことに八重の淡紅(うすくれなゐ)に咲けるが、晴れたる日、砂立つるほどの風の急(にはか)に吹き出でたるに、雨霰と夕陽(ゆふひ)さす中を散りたるなど、あはれ深し。
花のいろ/\ (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
吾(あ)は異(け)しき夢(いめ)を見つ。沙本(さほ)二の方(かた)より、暴雨(はやさめ)の零(ふ)り來て、急(にはか)に吾が面を沾(ぬら)しつ。また錦色の小蛇(へみ)、我が頸に纏(まつ)はりつ。
急(にはか)にも飢ゑて食(もの)ほしげなるに、彼此(をちこち)に六六𩛰(あさ)り得ずして狂ひゆくほどに、忽(たちま)ち文四が釣を垂るるにあふ。其の餌(ゑ)はなはだ香(かんば)し。心又六七河伯(がみ)の戒(いましめ)を守りて思ふ。我は仏(ほとけ)の御弟子なり。
思ひ入て擦る数珠(ずゞ)の音の声すみておぼえずたまる我涙かな、と歌の調は好かれ悪かれ、西行急(にはか)に読みかくれば、彼方は初めて人あるを知り、思ひがけぬに驚きしが、何と仰られしぞ、今一度と
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
この時御病いと急(にはか)になりぬ。ここに御歌よみしたまひしく
光りを磨きし餝屋(かざりや)とて日本の長者の名ありしものも、今は百貫目に足らぬ身代となり、是にては中々今までの格式を追ひ難しと急(にはか)に分別極めて家財を親類に預け、有り金を持つて代々の住所を立退き
花のいろ/\ (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)