応答こたえ)” の例文
旧字:應答
努めて一口応答こたえをしようと思うけれど、張りさけるような心臓の激動と、とめどなく流れる涙とに私はただすすり上げるばかりであった。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
この応答こたえが、もしすぐにこの場でできたとしたら、「蠅男」の正体は案外楽に解けたであろう。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ボクソウルは一応スミス船長に報告して、直ちに狼煙ロケットの打揚げ方に掛ったのだが、キャリフォルニアンからは何の応答こたえもないが、気のせいか段だん近づいて来るようにも思える。
運命のSOS (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
と女ははなやかなる声の優しくまずとい懸けたり。されど仙太は応答こたえもなさで、首をたれたるまま、時々思い出したらんように苫屋の方を振返りつつ、あてもなく真砂まさごの間をざくざくとふみ行きぬ。
片男波 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
赤心まごころめて一しょう懸命けんめい祈願きがんをすれば、それがただちに神様かみさま御胸みむねつうじ、同時どうじ神様かみさまからもこれにたいするお応答こたえくだり、ときとすればありありとそのお姿すがたまでもおがませていただけるのでございます……。
古老ころうに向って応答こたえ一つ致さぬとは——ウヌ、どうしてくれよう!」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
いつもの時間に給仕人ボーイのポウルが、それをテイラアの部屋へ持って行ったのだが、呼んでも叩いても応答こたえがないので、前に言ったように帳場へ下りて女将セレスティンを呼んで来て
ロウモン街の自殺ホテル (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
「おうさ。」藤吉親分の、無表情な応答こたえである。
釘抜藤吉捕物覚書:11 影人形 (新字新仮名) / 林不忘(著)