忌嫌いみきら)” の例文
くい刺草いらくさいたく我を刺ししかば、すべてのものの中にて最も深く我を迷はしわが愛を惹けるものわが最も忌嫌いみきらふものとはなりぬ 八五—八七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
忌嫌いみきらう間違ッた人もあろうけれど一日でも此巴里ぱりに探偵が無かッて見るが好い悪人が跋扈ばっこして巴里中の人は落々おち/\眠る事も出来ぬからさ、私は探偵の職業を
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
とお倉はいくらか国訛くになまりの残った調子で言った。この嫂はひどく宗蔵を忌嫌いみきらっていたが、でも話相手には成る。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
もだくるしみ、泣き叫びて、死なれぬごふなげきけるが、漸次しだいせいき、こん疲れて、気の遠くなり行くにぞ、かれが最も忌嫌いみきらへるへび蜿蜒のたるも知らざりしは、せめてもの僥倖げうかうなり
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そうして気の強い主婦からはがみがみ言われ、お島からはぶたか何ぞのように忌嫌いみきらわれた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
それが一般の評判になったので、表向おもてむきの罪人にこそならないけれども、御親類御一門も皆その奥様を忌嫌いみきらって、たれも快く交際する者もなく、はて本夫おっとの殿様さえも碌々ろくろくことばかわさぬくらい
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
元旦には、松の枝が折れたのさえ忌嫌いみきらうというのに、このざまはいったいなんとしたものだ。国にさえ居れば、酒に酔い、餅に飽き、思うさま飲み食いして楽しむのに、こんな船に乗ったばかりに、浅間しい春を
重吉漂流紀聞 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
お通はかねて忌嫌いみきらえる鼻がものいうことなれば、冷然として見も返らず。老媼は更に取合ねど、鼻はなおもずうずうしく、役にも立たぬことばかり句切もなさで饒舌しゃべりらす。
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一月二月ひとつきふたつき小野田の住込んでいたたなでは、毎日のように入浸いりびたっていたお島は、平和の攪乱者こうらんしゃか何ぞのように忌嫌いみきらわれ、不謹慎な口の利き方や、やりっぱなしな日常生活の不検束ふしだらさが
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)