御祈祷ごきとう)” の例文
よく効く巫女みこさんが昨日から島へ来とるんでな。若旦那も一ぺん御祈祷ごきとうしてもろうたら、どうやろうと思うて来ましたんやがな。
屋上の狂人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
御幣ごへいをこしらえるやら、色々な品物をそなえるやらして、いざ御祈祷ごきとうとなると、村中の人が男も女も子供も集まって来ました。
正覚坊 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
わたくしどもは以前、ただ戦争のことにつきましてあれが御祈祷ごきとうをしたり、おこもり、断食などをしたという事を聞きました時は、難有ありがたい人だと思いまして
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
老人には老人相応のオモチャをあてがって、おちついて隅の方で高慢の顔をさせて置く方が、天下泰平の御祈祷ごきとうになる。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「ホントにも嘘にも、昔からの言い伝えで、その時は、村中の御祓おはらい、御祈祷ごきとう、おつつしみをするのだ」
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
坊さんがたに御祈祷ごきとうをしてもらったよ、しかし、アリョーシャ、神かけてわしはあの『憑かれた女』を侮辱したためしはないよ! いや、一度、たった一度きりある。
「いくら、和尚さんの御祈祷ごきとうでもあればかりゃ、なおるめえ。全くせんの旦那がたたってるんだ」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
が、祖母はいつもと違って、お栄の泣くのにも頓着せず、その麻利耶観音の御宮の前に坐りながら、うやうやしく額に十字を切って、何かお栄にわからない御祈祷ごきとうをあげ始めたそうです。
黒衣聖母 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
九竜に向けて二重デッキの白いランチがかもめのようにランプの尾を海水に引いて走りだした。ローマン・カソリック・カセドラルの屋上に伊太利イタリーの尼僧があらわれると御祈祷ごきとうを始めた。
地図に出てくる男女 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
すなわち、四畳と六畳と三個のヘッツイが備わっておれば、いかなる建て方でもその家には災難なしとの意である。もし、これを欠かば災難があるから、御祈祷ごきとうを願わなければならぬことになる。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
教会からその付属物を取り去ってみよ、あとに何が残るか。しかしトラスト(二〇)は不思議なほど繁盛する、値段が途方もなく安いから——天国へ行く切符代の御祈祷ごきとうも、立派な公民の免許状も。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
ことに昼の御祈祷ごきとうの時分には毎日必ず幾分かのゲ(布施ふせ)を貰うことが出来るから、これは格別で、ことによると朝も晩も少しずつくれる事がありますから三度欠かさずに大抵は出かけて行くです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
易を立てるやら御祈祷ごきとうを上げて伺いを立てるやらした。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
るべい、」「遣れ。」「悪魔退散の御祈祷ごきとう。」村人は饒舌しゃべり立つ。太鼓は座につき、や笛きこゆ。その二、三人はやにわにお沢のきぬに手を掛く。——
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
行者はまっ白な着物をつけて、御幣を打ち振り打ち振り、魔法めいた文句を口の中で唱えながら、しかつめらしく御祈祷ごきとうを始めました。けれども、石は何としても石です。
正覚坊 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
御祈祷ごきとうをなすったんですって」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
念仏さえろくに真心からは唱えられんでございまして、御祈祷ごきとうそうなどと思われましては、第一、貴下の前へもお恥かしゅうございますが、いかがでございましょう。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それから御祈祷ごきとうがはじまるということ、手を休めてお庭からその一室ひとまかたを見ておりました。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)