御声みこえ)” の例文
旧字:御聲
ばばの唱える観音経かんのんぎょうの声がそこにする。ばばの眼や耳には、お通の声も姿もなかった。ただ、観音が見える。菩薩ぼさつ御声みこえが聞えている。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けだし最後の問題はヨブが直接神の声を聴くことである。彼はみずから父の御声みこえに接せずしては、満足しないのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
身もたまも捧げて彼を愛すと誓へる神前の祈祷いのり、嬉しき心、つらおもひ、千万無量の感慨は胸臆三寸の間にあふれて、父なる神の御声みこえ、天にます亡母はゝの幻あり/\と見えつ、聞えつ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
ほとんど奇蹟きせきの、天来の御声みこえに泣いておわびを申し上げたあの時だよ。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
舳櫓ともろ船子ふなこは海上鎮護ちんごの神の御声みこえに気をふるい、やにわにをば立直して、曳々えいえい声をげてしければ、船は難無なんな風波ふうはしのぎて、今は我物なり、大権現だいごんげん冥護みょうごはあるぞ、と船子ふなこはたちまち力を得て
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とその時宮家の御声みこえが、静かにおごそかに発せられた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さてゆくりなく、君が御声みこえ5890
七日七夜、彼が死に身になって向っていた聖徳太子の御声みこえでなくてなんであろう。自己の必死な思念に答えてくれた霊示にちがいないと思った。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)