從兄弟いとこ)” の例文
新字:従兄弟
從兄弟いとこの製造技師は無學文盲の爲めに他人にのせられ易いし、會計掛りとして遣はした弟はまだ學生あがりで本統の役には立たない。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
同時どうじに、一藝いちげいたつした、いや——從兄弟いとこだからグツとわりびく——たづさはるものの意氣いきかんじた。神田兒かんだつこだ。かれ生拔はえぬきの江戸兒えどつこである。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私はこゝで、故島村抱月君の從兄弟いとこにあたるといふ人にも逢つた。私はまた大谷君のやうな思ひがけない知己がこの土地にあることを知つた。
山陰土産 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
從兄弟いとこの金之丞が後見人になり、佐吉は相變らず支配人ばんとうとして、店の方を萬事取締つて行くことに決めてしまひました。
あたらしく出京しゆつきやうしたあにからは別段べつだん學資がくし世話せわけない所爲せゐか、自分じぶんうへいては叔父をぢほどしたしい相談さうだんんでなかつた。從兄弟いとこ安之助やすのすけとは今迄いままで關係上くわんけいじやう大變たいへんなかかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『性が合はんでも、僕は君の從兄弟いとこだよ。』
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
わしの從兄弟いとこがいふことに
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
まして、その見込みもなくなつた自分が、弟や從兄弟いとこをそのままにして置くのは、北海道よりも早いおほ雪の中で、渠等を進退に窮させるばかりだ。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
江の島で崖から私を突き落したのは一緒に泊つて居た、從兄弟いとこの吉五郎と丸屋の長次郎と、番頭の要助と、この三人のうちの一人に違ひ御座いません。
義雄は心で怒つた——從兄弟いとこの製造主任が謀反むほん心があつて、自分の不始末から起つた困難にも拘らず、その困難と負財増加とに堪へかね、それを免れる爲めに、早く義雄等の協同から
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
この敵同士のやうな若い男女——從兄弟いとこ同士の伜と娘が、親が非業に死んだ三日目だといふのに、もう薄暗い廊下の隅にひたひを寄せて、何やらひそ/\と話しをして居る仲だつたのです。
假令たとへ一度は勘當になつても、私に取つても從兄弟いとこではあり、何んとか身の立つやうにしてやらうと、私も精一杯心掛けては居りますが、困つたことに、その從兄弟の吉太郎が歸つて來てから
それから、製造主任は僕の從兄弟いとこで、拾數年來の經驗と信用とがある。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)