彫刻ほりもの)” の例文
まづ四隅よすみの柱と横の桟とは黄金きんで作り、彫刻ほりものをして、紅宝石、碧玉へきぎよく、紫水晶などをはめそれに細い銀の格子が出来てをりました。
孝行鶉の話 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
純白の大理石より成り、かのポリクレートのみならず、自然もなほ恥づるばかりの彫刻ほりものをもて飾らるゝをみたり 三一—三三
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
船首へさきに竜の彫刻ほりものがある。その先からふさが下がっている。月光に照らされて朦朧と見える。魔物のように速い速い。六人が櫂を漕いでいる。一人が梶を握っている。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「算盤もいらない。職人が銭勘定するようじゃ駄目だ、彫刻師としてえらくなれば、字でも算盤でも出来る人を使うことも出来る。ただ、一生懸命に彫刻ほりものを勉強しろ」
彫刻ほりものをする人もある、その美しいものは、私等わしらが国から、遠くゆびさ花盛はなざかりじゃ、散らすは惜しいに因って、わざと除らぬぞ!……何が、気の弱い此方こなたたちが
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其れには金箔を置たやえんと龍の彫刻ほりものがございまして、実に立派な物であつたが、慶応四年の戦に一燼の灰となつてしまつた、黒門を入りまして、左の方が東照宮の御宮入口に門が有つて
下谷練塀小路 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
まだお合羽かっぱさんに振袖のイタイケ盛りの頃から、この寺の本堂の片隅なぞにタッタ一人でチョコナンと座って、ふすまに描いてある四季の花模様や、欄間らんまの天人の彫刻ほりものなぞを写して御座る姿を
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
山姥やまうばなんぞも団十郎のいきで、彫刻ほりもののようにりあげてゆきたい方だが、野田安のだやすさんて、松駒連まつこまれんの幹事さんで芝居に夢中な人が、川上さんのお貞さんを助けて出ろと、なんといってもきかないのでね
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
蛇腹じやばらに似たるたなぞこの暗き彫刻ほりもの
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
春の草花くさばな彫刻ほりもの
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そうして周囲には彫刻ほりものがある。どうでも日本風の釜ではない。古代唐風の釜である。火炉もやっぱり唐風である。唐獅子の首だけを切って来て、押し据えたような形である。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と、残り惜しそうにいいますので、理由を聞くと、それはもと、この町内にいた人だが、今は大層出世をして彫刻ほりものの名人になっている。何んでも日本一のほりもの師だということだ。
春の草花くさばな彫刻ほりもの
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「これは何んでもボヘミヤ彫りだ。すこぶる珍らしい彫刻ほりものだ。音色も大方いだろう」
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)