張羅ちょうら)” の例文
やぶれ行燈が、軍之助の一張羅ちょうらであろう、黒木綿の紋付を羽織って、赤茶けた薄あかりが、室内の半分から下を陰惨に浮き出さしている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
あの垢じみた一張羅ちょうらをどこかで脱ぎ、そして、わずかに買ってきたおみやげにちがいない。市十郎は眼が熱くなった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いうにゃ及ぶだ。殺した一張羅ちょうらが生きてかえるとなると気がつええんだからね。だんなこそ、吹き流されちゃだめですぜ。いいですかい。まっすぐ行くんですよ……」
じいさんはわたくし姿すがたて、にこにこしながら『なかなかねんはいった道中姿どうちゅうすがたじゃナ。乙姫様おとひめさまもこれを御覧ごらんなされたらさぞおよろこびになられるであろう。わしなどはいつも一張羅ちょうらじゃ……。』
下剃したぞり一人ひとりをおいてられたのでは、家業かぎょうさわるとおもったのであろう。一張羅ちょうら羽織はおりを、渋々しぶしぶ箪笥たんすからしてたおはなは、亭主ていしゅ伝吉でんきちそでをおさえて、無理むりにも引止ひきとめようとかおのぞんだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「べつに用があるというわけじゃねえんだが、ちょっとその、なんですよ、じつあ一張羅ちょうらをね」