弥勒菩薩みろくぼさつ)” の例文
夢徳寺むとくじから弥勒菩薩みろくぼさつの金像を背負って出で来た貫一の行手に、またもや縞馬姿の刑事が立ちふさがったのには、さすがの貫一もぞっとした。
あの観音様は童子の御姿だとも言い、あるい弥勒菩薩みろくぼさつだとも伝えますが、美しいという点では、血の通っている十六歳の美人でも及びません。
世界の一番おしまいに出て来るという弥勒菩薩みろくぼさつの像をきざんで、その中に封じ込めて『男見るべからず』と固く禁制しておいた。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
北に弥勒菩薩みろくぼさつのお堂がございまして、あの辺には一帯に松柏の類が繁茂いたし、胆吹名代の薬草のございますのも、その辺であると伺いました。
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
玄宗げんそう楊貴妃ようきひの七月七日の長生殿の誓いは実現されない空想であったが、五十六億七千万年後の弥勒菩薩みろくぼさつ出現の世までも変わらぬ誓いを源氏はしたのである。
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ところが白氏は台所婆なぞを定規にして詩をった人なので、気の毒に其の益をも得たろうが其弊をも受け、又白氏は唐人の習い、弥勒菩薩みろくぼさつの徒であったろうに
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
拙僧せっそう西方さいほうの国より大心衆生たいしんしゅじょう人間界にんげんかい化現けげんした釈迦しゃか弟子でし文殊菩薩もんじゅぼさつという男。——またうしろにいるのは、勢至菩薩せいしぼさつ弥勒菩薩みろくぼさつ虚空蔵菩薩こくうぞうぼさつ大日菩薩だいにちぼさつの人々であるが……
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
東洋藝術のはらむ未来の文化財は大きくまた拡い。欧米と対蹠たいしょ的なものが沢山あるからである。例えばロダンの「考える人」と、中宮寺ちゅうぐうじや広隆寺の弥勒菩薩みろくぼさつ像とを比べると東西の対比がよく分る。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
あるとき公卿がこの笛を粗末にも膝から下に置いたところ、これを笛がとがめたのか蝉の所から折れてしまったという程のもの、いま宮は三井寺を立つに及んで本堂の弥勒菩薩みろくぼさつに供えたのであった。
中宮寺の如意輪観音は、実は弥勒菩薩みろくぼさつであろうという説を読んだことがある。その有力な根拠として、たとえば野中寺やちゅうじの同じ形式の半跏はんか像に「奉弥勒菩薩也」と銘記されていることが指摘されている。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
手づから弥勒菩薩みろくぼさつの座像をきざみて其の胎内にの絵巻物を納め、吾家の仏壇の本尊に安置し、向後こうごこの仏壇の奉仕と、此の巻物の披見は、此の家の女人のみを以てつかまつる可し。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「ここの弥勒菩薩みろくぼさつと、虚空蔵こくうぞう菩薩が、みかどの夢枕に立たれた」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わたくしは、弥勒菩薩みろくぼさつのみ使いです」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)