引金ひきがね)” の例文
さて引金ひきがねを引きたれども火うつらず。胸騒むなさわぎして銃を検せしに、筒口つつぐちより手元てもとのところまでいつのまにかことごとく土をつめてありたり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
さすがのガスコも、相手がガン人とわかっては、ピストルの引金ひきがねを引くわけにいかなくなり、こんどは警備軍へひき渡すといいだした。
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
ぼつぜんといかりをはっした竹童はあい手が、樹上じゅじょうの忍剣へ、狙撃そげき引金ひきがねをひこうとするすきへむかって、かんぜんとおどりかかってきたのである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たとへば鐵砲てつぽう彈丸たま遠方えんぽうばす原因げんいん火藥かやく爆發力ばくはつりよくであるが、これを實現じつげんせしめる副原因ふくげんいん引金ひきがねはづ作用さようである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
これを見たボートルレは何を思ったのか、手をポケットに突っ込んでピストルを握り、引金ひきがねに指をかけるや、いきなりマッシバン博士に向ってどんと一発撃ち放った。
吉田は院庭の柵をとび越して二三十歩行くなり、立止まって引金ひきがねを引いた。
雪のシベリア (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
この木と木を簡単に打ちつけたПの字の横木には、鐘が一つぶらさげてあって、べつにピストルが一ちょう結びつけてあった。そして鐘の舌とピストルの引金ひきがねからは、細いひもがたれさがっていた。
カシタンカ (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
鐵砲てつぽう彈藥だんやく裝填そうてんしてあれば引金ひきがねはづすことによつて彈丸たま遠方えんぽうぶが、もし彈藥だんやく裝填そうてんしてなくあるひたん彈丸たまだけめて火藥かやくくはへなかつたなら
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
火縄ひなわの火がチリチリと散ったせつなに、蛾次郎がじろうゆびさきは、すでに、短銃たんじゅう引金ひきがねを引こうとした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もちろん、機関銃の引金ひきがねを引くことも忘れて、とろんとしておった。気がついたときには、そばにドイツ兵がいたというのだ。これは一時性の神経瓦斯だ。一時性では効力がうすい。
恐ろしさに顔は真蒼まっさおであったが、しかもなお少年は、この場合どうすればいいかと考えていた。ピストルは眼の前に迫っている。太い指が引金ひきがねに掛っている。それを引けばそれまでだ。
其故それゆゑ地震ぢしん豫知問題よちもんだい研究けんきゆうおいみぎのような副原因ふくげんいん研究けんきゆうすることも大切たいせつであるが、しかしながら事實上じじつじよう問題もんだいとして引金ひきがね空外からはづしともいふべき場合ばあひすこぶおほいことである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)