弁解いいわけ)” の例文
旧字:辯解
こんな人通りのない路地の奥へ入って、どうして櫛なんか死体の側へ置いたか、その弁解いいわけさえ立てば、お静の疑いはすぐ晴れます
前夜遅くまで家に帰らなかった弁解いいわけは出来ないし、先生との関係がどんな風だか、下村さん達がいったし、それに先生の書き置きでしょう。
ニッケルの文鎮 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
許宣はびっくりして弁解いいわけしようとしたがそのひまがなかった。彼の体にはもう縄がひしひしと喰いついて来た。彼はその場から府庁に曳かれて往った。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「宝山流とあれば小具足じゃ。われらとは筋違い。何の会釈の要あろうや。止めたは奇怪! 弁解いいわけあらば聞こう!」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
自分は犯すつもりもなくこんな罪を犯したと言って見たところで、それが彼には何の弁解いいわけにも成らなかった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そういうおり、彼はいつでも上方における大石の廓通くるわがよいのことを想いだして、自分で自分に弁解いいわけをした。もちろん、頭領がしたから自分も遣っていいというのではない。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
萩乃を見る老父の眼には、始終弁解いいわけがましいものがひらめいて、彼女には、それがつらかった。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「うん、じゃあ帰るよ。で、おつきあいの出来ないことは、まあ勘弁して貰うぜ。心底しんそこそれあ面白かろうけどさ、生憎そうはいかんのだよ。」こんな風に妹婿は先に帰る弁解いいわけ
と、弁解いいわけがましく語尾を濁す。ハッチソンはニヤリと笑って
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
お貞はまじめに弁解いいわけして
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「銭形の、そんな甘口な弁解いいわけを信用しちゃならねえ、——第一金箱には五百両入っていたはずだっていうぜ、あとの二百両をどこへやったんだ」
弁解いいわけすれば弁解するほど益々疑いを増すばかりだと、こう思い付いた庄三郎は、何んと誰から訊かれても、自分の奇異な経験について物語ろうとしなかった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「私は、決して、そんな悪いものではありません、それをあなたに弁解いいわけしたくてまいりました」
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
弁解いいわけのようにうめいた伊賀のあばれン坊、不破ふわ関守せきもりの構えから、いきなり、身を躍らせると見せておいて……とりまく剣陣のさわぐすきに、近くの一人へ、横薙よこなぎの一刀をくれた。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
昨日きのうも小遣がかかり過ぎるからとさんざんの大小言で、二た言三言弁解いいわけをすると、今にも出て行け——とかさにかかって呶鳴どなり散らすじゃありませんか
弁解いいわけしたって通らねえよ。聞けば高島の城下(今の上諏訪町)から、多四郎とかいうなまちろい男が、お前を張りに来るそうだが、これ、気を付けねえといけねえぞ。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
許宣は一生懸命になって弁解いいわけをした。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
弁解いいわけのように途々みちみち話した。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
持出したにちげえねえ。すぐ飛んで行って、お篠に泥を吐かせるなり、次第によっては、引っくくって来やがれ。着物へ血でも付いていたら、弁解いいわけさせるんじゃねえぞ
「米屋薪屋醤油屋へ何んと弁解いいわけしたものか。ああああこれは困ったことになった。それだのにマアマア旦那様は首尾はよいの上々吉だのと。これが何んのめでたかろう」
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「それほど判っているなら、勘六が縛られる時、なんだって一言弁解いいわけをしてやらなかったんだ」
「米屋薪屋醤油屋へ何んと弁解いいわけしたものであろう」
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
弁解いいわけじゃございませんが、一と通り、こうなったわけを聴いちゃ下さいませんか、親分」
と、早瀬はおずおずと弁解いいわけした。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
女はひどく恐縮して、二人へ弁解いいわけをするともなく、顔の袖を取りました。堤の掛行灯かけあんどんは少し遠過ぎますが、ちょうど田圃たんぼの上へ出た月が、その素晴らしい容貌きりょうを、惜しみなく照し出します。
平次はつばでもきかけたい心持でした。余りにも見え透いた弁解いいわけです。
「隠居のあとからすぐ外へ出たから、弁解いいわけが立たないというのか」
「お前が五貫目もある竹筒を担ぎ出したのでないことは、この平次がよく分っているが、お白洲しらすの砂利の上ではそんな弁解いいわけは通らねえぞ。さアお角、小判をどこから出した、ここで言うか、それとも」
「今さら弁解いいわけをしても追付くめえ、素直に申上げてお慈悲を願え」
そう言うのが、せめてもの弁解いいわけです。
弁解いいわけしたって無駄だよ、——雪駄を