帳合ちょうあい)” の例文
此の叔父の読み方が実に不思議で、ちやうど番頭が帳合ちょうあいを附けるやうなふしで読むのだ。そしてところ/″\滑稽な読み違ひをした。
青春物語:02 青春物語 (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
其の頃お商人方あきんどがたではの四ツ時になれば戸を締めてしまいます、店に小僧が手習をして居ります、此方こちらには番頭が帳合ちょうあいを致して居りますと
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その木材の蔭になって、日の光もあからさまには射さず、薄暗い、冷々ひやひやとした店前みせさきに、帳場格子ちょうばごうしを控えて、年配の番頭がただ一人帳合ちょうあいをしている。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今日も、それを繰返して考えたり、帳合ちょうあいをしたり、帳合をしてはそれを繰返して考えてみたりしているところへ、老番頭の太平がやって来ました。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「番頭どん、わしは奥のお客様を案内して、夕飯は河原の井筒屋いづつやですまして来ますから、帳合ちょうあいがすんだら、早目に戸を下ろして、みんなも今夜は休ませて下さい」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小学には少しく縁の遠きことなれども、筆算のついでに記簿帳合ちょうあいの事をいわん。
小学教育の事 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
暮六つに店をめてから、夕食を済ませたあと、番頭と二人の手代を相手に、帳合ちょうあいをするのが店のきまりで、そのときは歳末が近づいていたため、地方との取引先の分もあり、十一時過ぎになって
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
母家おもやの店におりました、少しばかり帳合ちょうあいの残りがございまして」
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
帳合ちょうあいを終った少年は、しきりにそのこも包の荷造りを改めはじめる。余念なくその荷造りを調べている時、後ろで
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
柳屋は浅間あさま住居すまい上框あがりがまち背後うしろにして、見通みとおしの四畳半の片端かたはしに、隣家となり帳合ちょうあいをする番頭と同一おなじあたりの、柱にもたれ、袖をば胸のあたりで引き合わせて、浴衣ゆかたたもと折返おりかえして
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ここに紫金大街しきんたいがいで一番の大店舗おおみせしち、物産屋の招児かんばんも古い盧家ろけの内では、折しも盧の大旦那——綽名あだな玉麒麟ぎょくきりんが——番頭ばんとう丁稚でっちをさしずしてしきりにしち流れの倉出し物と倉帳くらちょうとの帳合ちょうあいをやっていたが
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ようがすか、用をしまうのは日の暮方まで掛りましょう、帳合ちょうあいなどを致しますからな、用が終って飯を食ってはどうしてもの六つすぎになります、其処そこで三拾両持って出掛ける、富五郎がお供でげす
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そのおかみさんが今、店頭の賑わいを前にして帳合ちょうあいをしている横の方から、若い女中が一人出て来て、おかみさんに向って私語ささやきましたから、おかみさんが
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
室町屋の帳場で帳合ちょうあいをしていたこの家の若い女房——まだ眉を落さないが、よく見れば、それは、二月ほど前に、初瀬河原から藍玉屋の金蔵につれられて逃げたお豊であることは意外のようで
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)