川端かわばた)” の例文
ごく景色の美しい所でだんだんその平原地を山の中へ山の中へと進み、ごく狭い谷間をだんだん上って行くとその川端かわばたに一軒家があります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
今年はが好くて、川端かわばたの岩さん家では、四円十五銭に売ったと云ううわさが立つ。隣村の浜田さんも繭買をはじめた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
長吉は観劇に対するこれまでの経験で「夜」と「川端かわばた」という事から、きっところに違いないと幼い好奇心から丈伸せのびをして首をのばすと、はたせるかな
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
利根の川端かわばたの渡し小屋に、老いたる船頭と身許不明の盲人とが、雨のふる夜も風の吹く夜も一緒に寝起きするようになって、ふたりの間はいよいよ打解けたわけであるが
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
五五 川には川童かっぱ多く住めり。猿ヶ石川ことに多し。松崎村の川端かわばたうちにて、二代まで続けて川童の子をはらみたる者あり。生れし子はきざみて一升樽いっしょうだるに入れ、土中にうずめたり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
川風寒き千鳥足、乱れてぽんと町か川端かわばたあたりにとどまりし事あさまし。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
此処こゝ川端かわばたと申します。お寺が幾らも並んで居ります。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その川端かわばたいわやれた枯木かれきをようやく燃しつつ溪流の清水しみずで茶をこしらえて飲み、それからまただんだん降ってダカルポ(白岩村はくがんそん)という所に出ました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
夕方三人で又一君宅の風呂ふろをもらいに行く。実は過日来往返おうへんたび斗満橋とまむばしの上から見てうらやましく思って居たのだ。風呂は直ぐ川端かわばたで、露天ろてんえてある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
泳ぐ事もできず裸体はだか川端かわばたを横行する事も出来ぬ時節になっても、自分はやはり川好きの友達と一緒に中学校の教場以外の大抵な時間をば舟遊びに費した。
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しかし寂しい在所ざいしょの村はずれ、川端かわばた、森や古塚の近くなどには、今でも「良くないところだ」というところがおりおりあって、その中には悪い狐がいるといううわさをするものも少なくはない。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その水はどこからあおぐかというと、御殿の所から二、三丁も下へ降り、それからまた平地を二丁ばかり行ってはるか向うに流れてある川端かわばたいどから水を運ぶのです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
鎌倉文庫は初に川端かわばたさんが来ての話だったから単行本の出版を承諾したのです。
出版屋惣まくり (新字新仮名) / 永井荷風(著)
わしの行くお寺はすぐ向うの川端かわばたさ、松の木のそばに屋根が見えるだろう。」
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)