山梨やまなし)” の例文
八つが岳山脈の南のすそに住む山梨やまなしの農夫ばかりは、冬季のまぐさに乏しいので、遠くそこまで馬を引いて来て草を刈り集めているのでした。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
酒折さかをりみや山梨やまなしをか鹽山ゑんざん裂石さけいし、さし都人こゝびとみゝきなれぬは、小佛こぼとけさゝ難處なんじよして猿橋さるはしのながれにめくるめき、鶴瀬つるせ駒飼こまかひるほどのさともなきに
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
山梨やまなしのような赤いをきょろきょろさせながら、じっと立っているのでした。
彼らが五時間眠っている間に、海はいだ。アルプスのように骨ばっていた海面は、山梨やまなし高原のようにうねっていた。マストに、引っかかりっつかった雲は、今は高く上の方へのぼって行った。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
山梨やまなしの枝にかゝれば
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
これをつまちて山梨やまなし東郡ひがしごほり蟄伏ちつぷくするかとおもへばひとのうらやむ造酒家つくりざかや大身上おほしんしようもののかずならず、よしや家督かとくをうけつぎてからが親類縁者しんるいえんじや干渉かんしようきびしければ
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なまよみの甲斐かいの国、山梨やまなしあがたを過ぎて、信濃路しなのじに巡りいでまし、諏訪すわのうみを見渡したまひ、松本の深志ふかしの里に、大御輿おおみこしめぐらしたまひ、真木まき立つ木曾のみ山路、岩が根のこごしき道を
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)