屋造やづくり)” の例文
古代を眼前めのまへに見るやうな小都会、奇異な北国風の屋造やづくり、板葺の屋根、または冬期の雪除ゆきよけとして使用する特別の軒庇のきびさしから
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
何処いずこ同一おなじ、雪国の薄暗い屋造やづくりであるのに、ひさしを長く出した奥深く、すすけた柱に一枚懸けたのが、薬の看板で、雨にも風にもさらされた上、古び切つて、虫ばんで
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
この大きな、古風な、どこかいかめしい屋造やづくりの内へ静かな光線を導くものは、高い明窓あかりまどで、その小障子の開いたところから青く透きとおるような空が見える。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
やがて二かい寐床ねどここしらへてくれた、天井てんじやうひくいが、うつばり丸太まるた二抱ふたかゝへもあらう、むねからなゝめわたつて座敷ざしきはてひさしところでは天窓あたまつかへさうになつてる、巌丈がんぢやう屋造やづくり
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
田舎いなか風の屋造やづくりのことで、裏口から狭い庭を通って、表の方へ抜けられる。表座敷へ通う店頭みせさきの庭のところで、三吉、正太の二人は沢田老人の訪ねて来るのにった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
やがて二階に寝床ねどここしらえてくれた、天井てんじょうは低いが、うつばりは丸太で二抱ふたかかえもあろう、屋のむねからななめわたって座敷のはてひさしの処では天窓あたまつかえそうになっている、巌乗がんじょう屋造やづくり
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
余計なことを言うようですが、あとの都合がありますから、この屋造やづくりの様子を聞いて下さい。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
むかしの街道は木曾風の屋造やづくりの前にあった。従順な森彦の妻は夫を待侘顔まちわびがおに見えた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)