居据いすわ)” の例文
他家に嫁して舅姑の跡を継ぐ者あり、生れたる家に居据いすわりて父母の跡を継ぐ者あり、其辺に心付かざりしは全く記者の粗漏そろうならん。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「さすがは信長かな、もしあのまま居据いすわっていたら、次の日には、ことごとくわが馬蹄にかけて、信長へ見参とともに、川へ斬りすててくれたものを」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれども多年の功労の後なので、辞職聴許はむずかしかろうし、居据いすわりを懇願せられることだろうと、ひそかに期待していた。ところがそうではなかった。
最後のものを売りそこねた一家はどうにもこうにもならなくなった。家主は毎日のように家賃の居据いすわ催促さいそくをする。近所の小店こみせは何一つ貸売りしてくれない。
故郷の親戚に便たよって逃げて行ったのもあれば、市から建てたバラックに逃げ込んだのもある。又は郊外に避難小舎を建てて、そのまま居据いすわったのもあるであろう。
一ツ橋門外の二番御火除ひよけ地の隅に居据いすわっている雪だるまも、一方に曲木まがき家の御用屋敷を折り廻しているので、正月の十五日頃までは満足にその形骸けいがいを保っていたが
半七捕物帳:28 雪達磨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
元々頑丈がんじょうにできた身体からだだから単にけ歩くという労力だけなら大して苦にもなるまいとは自分でも承知しているが、思う事が引っかかったなり居据いすわって動かなかったり
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
立ち退かないのだから、いつまでもここに居据いすわっていましょう。……お隣りの親方、御免なさいよ
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
到底地方に居据いすわっていては出来る仕事ではないのであった。
あくる日一日は無理に寝かしておいたが、娘は次の日から跛足びっこをひきながら起きた。しかし彼女はここを立去ろうともしないで、そのままこの家に居据いすわっていることになった。
有喜世新聞の話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
返事を待ち受ける間の津田は居据いすわりの悪い置物のように落ちつかなかった。ことにすぐ帰ってべきはずの下女が思った通りすぐ帰って来ないので、彼はなおの事心をつかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
到底地方に居据いすわっていては出来る仕事ではないのであった。
油絵新技法 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
あくる日一日は無理に寝かしておいたが、娘は次の日から跛足びっこをひきながら起きた。しかし彼女はここを立ち去ろうともしないで、そのままこの家に居据いすわっていることになった。
探偵夜話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)