居住居いずまい)” の例文
銀色の十字架を胸にびてゾロゾロと乗込んで来たので、居住居いずまいを崩していた羽織袴連中は、今更のように眼をそばだてて坐り直した。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
お納戸の絹セルに、ざっくり、山繭縮緬やままゆちりめんしまの羽織を引掛けて、帯のゆるい、無造作な居住居いずまいは、直ぐに立膝にもなり兼ねないよう。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
兄さんは始めのうちは苦笑していました。しかししまいには居住居いずまいを直して真面目まじめになりました。そうして実際孤独の感にえないのだと云い張りました。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
明日あしたの死はともかくとして、今日は今日の一日を、もう残り少い人生を、心にみて、味わって行こうとするらしい居住居いずまいの者と、墨をって黙想する者と
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
待合の女中が這入って来てもお千代は一向居住居いずまいを直そうともせず、男の身体にしなだれかかったままで、「ねえさん済みません。失礼。」とお客よりも先に帯を解いてはばからぬ始末。
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
文三が二階を降りて、ソットお勢の部屋の障子を開けるその途端とたんに、今まで机に頼杖ほおづえをついて何事か物思いをしていたお勢が、吃驚びっくりした面相かおつきをしてすこし飛上ッて居住居いずまいを直おした。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
三郎兵衛は居住居いずまいを直して、煙管きせるを逆に取りました。娘を意見し馴れたポーズです。
銭形平次捕物控:239 群盗 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
と、居住居いずまいを正したが、にわかに声を低目にし、「正直にいえ、職人ではあるまい」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
藤枝は刀のつかに手をかけた。女は居住居いずまいをなおして両手を突いた。
女賊記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
居住居いずまいを直して、ともかくも一と通りの挨拶をした。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その物凄い度胸の力……その力に押え付けられるように私は又、ソロソロと椅子に腰をかけた。そうして改めてその力に反抗するように居住居いずまいを正した。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
どんも石獅も、思わず居住居いずまいを直した。この臭気も又、忠誠から発するにおいであったかと心を打たれたからである。忠義は、赤穂藩だけのものではなかったと思った。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
津田はちょっと居住居いずまいを直して叔父に挨拶あいさつをしたあとで、すぐ小林の方を向いた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
心持ち蒼い顔に、黒い瞳を凝然じっと据えたまま静かに部屋の入口を振返った……が、やがて又おもむろに私の方へ向き直ると、やおら椅子の上に居住居いずまいを正した。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
こう云いながら相手の話をさえぎり止めた健策は、急に長椅子の上に居住居いずまいを正した。
復讐 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
危うく右へ飛び退いた平馬は、まだ居住居いずまいを崩さずに両手を膝に置いていた。
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「エッ見せて下さいますか」と私は思わず釣り込まれて居住居いずまいを直した。
あやかしの鼓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「じゃ御免下さい」と一礼して羽織を脱いだ、妻木君も居住居いずまいを直した。
あやかしの鼓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私はそれを見ると、自ずと廻転椅子の上に居住居いずまいを正した。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
居住居いずまいを正して少年に問いかけた。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)