小猫こねこ)” の例文
二人は暖炉の前にすわって口をつぐみ、小猫こねこがその間にうずくまっていた。三人ともじっと考え込んで、暖炉の火をながめていた。
つい今しがた母胎を出たばかりなのに、小猫こねこの様な啼声なきごえを出して、いきおいもうに母の乳にむしゃぶりつく。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
此時このとき不意ふいに、波間なみまからをどつて、艇中ていちう飛込とびこんだ一尾いつぴき小魚こざかな日出雄少年ひでをせうねん小猫こねこごとひるがへして、つておさへた。『に、にがしては。』とわたくし周章あはてゝ、そのうへまろびかゝつた。
わたしがすわっていると、頭の上の、すっかり暗くなったしげみの中で、小鳥が一羽いちわしきりにかさこそいわせていた。灰色の小猫こねこが、背中をまっすぐばして、そっと庭へしのんだ。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
それから、ばあやが、どんな顔をして飲むかとおもつて、コーヒーの中へインキをちよつぴりおとしておきました。それからうつかり、小猫こねこのプスをお客間へしめこんでしまひました。
青い顔かけの勇士 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
夜食に大抵古沢庵ふるたくあんの二きれか三片で、昼も、たまに小猫こねこの食べるほどのさけの切身の半分もつけばおごった方で、朝の味噌汁の冷え残りか、生揚げの一ひらで済ますという切り詰め方であった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
一人で昼食をともかくも済まし——(彼女はいつもあまり食欲がなかった)——必要な用達ようたしに外へ出かけ、一日の用が済んで、四時ごろ居間に引っ込み、編み物と小猫こねことをかかえて