小坊主こぼうず)” の例文
その時小犬ほどな鼠色ねずみいろ小坊主こぼうずが、ちょこちょことやって来て、あなやと思うと、がけから横に宙をひょいと、背後うしろから婦人おんなの背中へぴったり。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
銀杏いちょうかやの実などの数をあてる女の子の遊びにこの語を用い、なかには「なかなか小坊主こぼうず」と同じく、手をつないで輪になって中央にうずくまった
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
妹子いもこはおいいつけのとおり、シナへわたるとさっそく、衡山こうざんというところへたずねて行きました。そしてその山の上のおてらへ行くと、もん一人ひとり小坊主こぼうずっていました。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「おまえこそいったい何者だい、鞍馬寺くらまでら小坊主こぼうずさんでもなし、まさか山男のせがれでもあるまい」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この寺には年寄としよった住職じゅうしょく小坊主こぼうず一人が住んでいたが、住職はついに死んでしまい、小坊主はそんなところに一人では住んでいられないと言って、村へげて来てしまった。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
言った者には、覚えのあるはず。いや、それがしは神通力も何も持っていない。あの赤い太鼓は重かったであろう。あの中に小坊主こぼうずひとりいれて置いた。委細はその小坊主から聞いて知った。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
妹子いもこがこうこういうものだといって案内あんないをたのみますと、小坊主こぼうずはもうまえからっているといったように
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
なかの中の小坊主こぼうず」とか「かアごめかごめ」と称する遊びは、まさしくその名残である。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そのほか振袖ふりそでのわかい腰元三人、それから中居なかい、茶の間、御物おもの縫いの女、それから下働きのおさんどん二人、お小姓二人、小坊主こぼうず一人、あんま取の座頭一人、御酒の相手に歌うたいの伝右衛門でんえもん
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
するとその小坊主こぼうずというのは勝軍地蔵しょうぐんじぞうさまで、おおきなひげおとこえたのは勝敵毘沙門天しょうてきびしゃもんてんちがいありません。どちらもこの御堂おどうにおしずまりになっていらっしゃいます。
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)