寸毫すこし)” の例文
しな病氣びやうきあんずるほかかれこゝろにはなにもなかつた。その當時たうじには卯平うへい不平ふへいをいはれやうといふやうな懸念けねん寸毫すこしあたまおこらなかつたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
喋りながらも寸毫すこしの隙なく詰寄せてくる太刀に気は苛立ちながら、押され押されして次第に追込まれる。軒下に焚物の枯松葉が積んであったが其処まで押つけられてしまった。
鍵屋の辻 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
又、廃帝の一族が、何んな残虐な運命に逢おうと、私の実生活はその為に寸毫すこしも、影響を受ける訳でもありませんでした。併し、私の感情は此の記事の為に、底深く抉ぐられたように思いました。
たちあな姫 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
かれには寸毫すこし父兄ふけいちからかうぶつてない。頑是ぐわんぜない子供こどもあひだにも家族かぞくちから非常ひじやういきほひをしめしてる。その家族かぞくが一ぱんから輕侮けいぶもつられてるやうに、子供こどもあひだにもまたちひさい與吉よきちあなどられてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)