寡聞かぶん)” の例文
従来、清盛を書いた小説としては、私の寡聞かぶんでは、明治四十三年千代田書房発兌はつだ山田美妙やまだびみょう氏の平清盛があるだけではないかと思う。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
世間に所謂女学生徒などが、自から浅学寡聞かぶんを忘れて、差出がましく口を開いて人に笑わるゝが如きは、我輩の取らざる所なり。
新女大学 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
もとより浅見にして寡聞かぶん、お腹の立つような申上げようも致すかもしれませんが、これも他山の石として御聴取を願い得れば、光栄の至りでございます
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「そういう話は聞いたことがないな」と住職は笑いをうかべながら答えた、「ぼく寡聞かぶんにして知らずといったところかな、しかしまあ、いいじゃないか」
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
手紙で返事を寄こして、僕、寡聞かぶんにして、ヘルベルト・オイレンベルグを知りませず、恥じている。マイヤーの大字典にも出て居りませぬし、有名な作家ではないようだ。
女の決闘 (新字新仮名) / 太宰治(著)
どん底にぶつかったところが——自今いまの世相から見て、生命いのちをかけたいわゆる男の、武士道的な誓約のある事を、寡聞かぶんにして知らないから——物質と社会上の位置とを失えば
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
聞くからに荒唐無稽こうとうむけいである。第一、浅学寡聞かぶんの筆者が、講談、俗話の、佐賀、有馬の化猫は別として、ほとんど馬五郎談と同工異曲なのがちょっと思い出しても二三種あります。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
最近、最も景気がよくて盛んな国、アメリカにどんな画家が輩出しているのか、寡聞かぶんな私は知らないのである。アメリカでは映画と広告美術があれば事はっているかも知れない。
油絵新技法 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
予の寡聞かぶんを以てしても、甲教師は超人哲学の紹介を試みたが為に、文部当局の忌諱きいに触れたとか聞いた。乙教師は恋愛問題の創作に耽ったが為に、陸軍当局の譴責を蒙ったそうである。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
ドイツ側は勿論、聯合軍側でも気象学者がどれだけ活動しているかについては寡聞かぶんにして何らの報告にも接しないが、ドイツのごとき国柄では平生から推して考えてもほぼ想像は出来る。
戦争と気象学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
いわんや殊にこんな花恥ずかしき美婦人においてをや! そして寡聞かぶんにして私は自分がベンゲラ滞在中には、いまだ白色婦人の行方不明になった事件のあったのを聞いたことがなかった。
令嬢エミーラの日記 (新字新仮名) / 橘外男(著)
貧弱なる日本ではあるが、にはこれほどまでに愚図ぐずそろって科学を研究しているとは思えない。その方面の知識にうと寡聞かぶんなる余の頭にさえ、この断見だんけんを否定すべき材料は充分あると思う。
学者と名誉 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
寡聞かぶんにしてわたくしは知りません。あったなら御教示を得たいものです。
これには何か理由があるだろうが、心当りはないかというような話であった。私が寡聞かぶんなためかとも思うが、古い記録の中には思い合せるようなことはなく、また単独にも推測し得られる原由はない。
和州地名談 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「さきごろ、貴国では、兵をもよおして、曹操を攻められた由ですが、まだ寡聞かぶんにして、その結果を聞いておりません。勝敗はどうついたのですか」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そういう話は聞いたことがないな」と住職は笑いをうかべながら答えた、「ぼく寡聞かぶんにして知らずといったところかな、しかしまあ、いいじゃないか」
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
最近、最も景気がよくて盛んな国、アメリカにどんな画家が輩出しているのか、寡聞かぶんな私は知らないのである。アメリカでは映画と広告美術があれば事はっているかも知れない。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
「洛陽の王軍に、けいらのごとき勇将があることは、まだ寡聞かぶんにして聞かなかったが、いったい諸君は、なんという官職に就かれておるのか」と、身分をただした。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)