寝間着ねまき)” の例文
旧字:寢間着
その記者が寝間着ねまきにしていた古浴衣を貰い受けまして、その別荘の御厄介になりながら、毎日毎日ボンヤリしていた訳でしたが……。
キチガイ地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
神谷は寝間着ねまきのままはね起きて、手早く窓の障子しょうじと雨戸とをひらいてみた。まさか、そんなものがいようとは、夢にも考えていなかった。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
部屋に這入ると、手探りで蒲団ふとんを敷いて蚊帳かやった。寝間着ねまきに着かえる力もなく、そのまま私はふとんの上に寝そべった。
寝間着ねまきたけが短くて、足がつめたいとお言いだそうだが、長いのが間にあわないから私の下着を着て寝たらよい。」
寝間着ねまきの若い衆、寝ぼけまなこのおかみさん、おどろいた犬、猫まで飛び出して、長屋はにわかに非常時風景だ。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
広子は寝間着ねまきに着換えた上へ、羽織だけもんのあるのをひっかけたまま、円卓の前の安楽椅子あんらくいすへ坐った。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
この前の、わざとった高髷たかまげとは変って、今夜は、長い、濡羽ぬればいろの黒髪を、うしろにすべらして、紫の緒でむすんで、あかい下着に、水いろの、やや冷たすぎるようなあや寝間着ねまき——
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
男は寝間着ねまきのまま、屋根から隣りの家い逃げて物干ものほしの床の下いもぐり込んでた。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
まず運動にも作業にも不便なような趣味ばかりを、上品として模倣したのであって、結局こんな行きがかりを打破するためには、西洋寝間着ねまき細紐姿ほそひもすがたでも礼讃したくなるのがもっともだといえる。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
角の交番を曲ったところから五十銭だまを握っていて止るとすぐ降り、家までの横丁をいそいで歩いて玄関をあけようとしたら閉っている。戸があいてまだ寝間着ねまきの家のものの顔が出るとすぐ訊いた。
一九三二年の春 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
老人が立ち上がって尋ねると、お嬢さんはムクムクとベッドの上に起き上がって、天蓋てんがいの薄絹をかき分け、やっとその寝間着ねまき姿を現わした。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ウッカリ持ち出すと反逆者の下役人に見咎みとがめられるおそれもありますので、ソックリそのまま寝間着ねまきに使っていたのでした。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
寝間着ねまきをぬいで、着物をはおったまま、帯も締めないで、それを片手につかんで、縁側の方へ走って行った。
疑惑 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
リンネルの寝間着ねまきに包まれて寝かされている。
幽霊と推進機 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そして、寝間着ねまきのまま、エレベーターの横の、狭い階段を、夢中で五階まで駈け昇ったのです。
目羅博士の不思議な犯罪 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
白いダブダブの寝間着ねまきを着た骸骨がいこつが、今墓場の中からよみがえって来たという恰好で、そこにヒョッコリ立っているのだ。守青年は、ギョッとして、思わずタジタジとあとじさりしながら
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
電話を切ると、明智はソワソワと出発の支度したくを始めた。支度といっても、トランク一つの旅だ、手間暇てまひまはかからぬ。寝間着ねまきと汚れたシャツ類を、トランクに詰め込んで、勘定かんじょうを支払えばよいのだ。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
彼は大急ぎで寝台を飛び降りると、寝間着ねまきのまま、部屋を飛び出した。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)