寄附きふ)” の例文
二三年前、O市に水産共進会があって、その際、金牌きんぱいち得たこの金魚の名品が試験所に寄附きふされて、大事に育てられているのだ。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
静の菩提ぼだいとむらうために村の西生寺と云う寺へ寄附きふしたが、今はだれの手に渡ったか、寺にもなくなってしまったとのこと。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「実にいい標本です。いかがです。一つ学校へご寄附きふを願えませんでしょうか。」と云うのです。私は仕方なく
茨海小学校 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「いや飛んでもない、お客樣大事、仲間の者とも折合が良いやう奉公人の扱ひ、附け屆け、勸進くわんじん寄附きふなど、一つとして手ぬかりのないつもりでございます」
Kが新しく引き移った時も、私が主張して彼を私と同じように取り扱わせる事にめました。その代り私は薄い板で造った足のたたみ込める華奢きゃしゃな食卓を奥さんに寄附きふしました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まったくこの女はオッチョコチョイで、出鱈目でたらめだったが、共産党の地下運動にはカブトをぬぐ性質に相違なく、五十銭寄附きふしたけれども、あとは降参、逃げだしたと言っていた。
二十七歳 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
さるほどに、美人びじんたちの寄附きふによつて、づらりとあつたかいものがならんで、金屏風きんびやうびもキラ/\とかゞやわたり、やきのりをたていて心配しんぱいしてた、藤村ふぢむらやさしい妹分いもとぶんも、うれしさうなかほをした。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
祈願所きぐわんじよと御定め一ヶ年米三百ぺうづつ永代えいだい寄附きふある樣に我々取計とりはからひ申べし然すれば永く社頭のほまれにも相成候事なり精々せい/″\はたらき下されと事十分なるたのみの言葉ことばに肥前の申樣は御入用の金子は何程いかほどぞんせねど拙者せつしやに於ては三百兩を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)