家持やかもち)” の例文
躬恒のは瑣細ささいな事をやたらに仰山に述べたのみなれば無趣味なれども、家持やかもちのは全くない事を空想で現はして見せたる故面白く被感かんぜられ候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
(三嶋郡とする説もあり)家持やかもちの哥に「ゆきかへるかりのつばさをやすむてふこれや名におふうら長浜ながはま」▲名立なだち 同郡西浜にしはまにあり、今は宿しゆくの名によぶ。
笠女郎かさのいらつめ(伝不詳)が大伴家持やかもちに贈った三首の一つである。「真野」は、今の磐城相馬郡真野村あたりの原野であろう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
五郎 (殆んど叫ぶやうな声になつてゐる)眠るな! 眠つちやいかん! 馬鹿! 聞くんだ! 大伴家持やかもちだ。
浮標 (新字旧仮名) / 三好十郎(著)
文學者だと思つてだらう、或代議士が遞相と同船中、家持やかもちの長歌「海行かば」云々、「山行かば」云々の句を解し得なかつた滑稽を、特に面白さうに話した。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
其にふるまひのおほどかなこと、若くからうぢかみで、数十家の一族や、日本国中数千の氏人から立てられて来た家持やかもちも、静かな威に圧せられるやうな気がして来る。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
皆社会外に立てる人にあらずして要するに詩作家たるのみ、人丸ひとまろ赤人あかひと憶良おくら家持やかもちまた人格の察すべきなく、今日においてはただその詩作家たるを感ずるのみ、以上の諸大家
絶対的人格:正岡先生論 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
大伴家持やかもちが、一族の子弟に与えるため作ったものという「やからす歌」だった。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家持やかもちの歌ひとつ浮んで來なかつた。
黒髪山 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
家持やかもち妻恋舟つまごいぶねか春の海
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
躬恒のは瑣細ささいなことをやたらに仰山ぎょうさんに述べたのみなれば無趣味なれども、家持やかもちのは全くないことを空想で現わしてみせたるゆえ面白く被感かんぜられ候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
(三嶋郡とする説もあり)家持やかもちの哥に「ゆきかへるかりのつばさをやすむてふこれや名におふうら長浜ながはま」▲名立なだち 同郡西浜にしはまにあり、今は宿しゆくの名によぶ。
「恋しけば形見にせむと吾が屋戸やどに植ゑし藤浪いま咲きにけり」(同・一四七一)があり、これを模して家持やかもち
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
おもうに当時の歌人等は、家持やかもちなどを中心として、古歌を読み、時にはかく露骨に模倣したことが分かり、模倣心理の昔も今もかわらぬことを示している。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
よみたる古哥に(万葉)「いや日子ひこのおのれ神さび青雲あをくものたなびく日すら小雨こさめそぼふる(よみ人しらず)」又家持やかもちに「いや彦の神のふもとにけふしもかかのこやすらんかはのきぬきてつぬつきながら」▲長浜ながはま 頸城郡くびきごほりり。
よみたる古哥に(万葉)「いや日子ひこのおのれ神さび青雲あをくものたなびく日すら小雨こさめそぼふる(よみ人しらず)」又家持やかもちに「いや彦の神のふもとにけふしもかかのこやすらんかはのきぬきてつぬつきながら」▲長浜ながはま 頸城郡くびきごほりり。