にわ)” の例文
合戦のにわに千騎萬騎の中へ斬り入り一命を捨てるのもこんなではないかと思いながら、急いでそこを立ち去った其の折の覚悟の程と申すものは
三人法師 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その日以来、支那式の温室は、私達に執っては何より楽しい隠家かくれがとなったのでございます。恋の隠家、接吻の場所——媾曳あいびきにわとなったのでした。
温室の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
東塔の無動寺には、近ごろ、おさない住持が来て、日ごとに勤行ごんぎょうにわへ見えるようになった。いうまでもなく範宴はんえんである。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、乃公だいこうのでる幕は、まだまだと言わぬばかり……大之進も相当の人物で、乱陣のにわをすこしはなれた路傍の切り株に腰をおろし、大刀を杖にだいて、ジッと左膳のようすに眼をこらしている。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
このにわをあはれみの目もて見わたす。5330
はじまらん踊のにわの人ゆきき
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
その猿若は小北山における、例の乱闘のにわから遁れ、京都の町へ入り込んだが、民弥のことが気にかかってならない。
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
、長柄でろして来やれ。長柄も背丈も届かぬ梢も、心して跳んでって見やい。それしきもの斬れねば、殿様の御馬前に立って、いくさにわで人勝りの働きはならぬぞい
剣の四君子:03 林崎甚助 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
乱闘のにわ……火は、こうして起こったのです。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
祭のにわに賑はしく集へる君等よ。
来る人の姿、行く人の姿、頼春の眼には夢の中の人物、遠い他国の武者押しのにわの、他人かのように思われ見えた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いくさと同時に、ここもいくさにわとなった。ただ気づかわるるは、御所のあたりじゃが」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
晴やかなる祭のにわに行かむ。
乱闘のにわから走り出たのは、これまでの戦いに薄手ではあるが、数ヵ所にを負った紋也であった。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
切り合いのにわからはかなり距たった地点の、この境地ではあったけれど、四辺あたり何んとなく騒がしく、駈け行く人、駈け来る人の、足の音など慌しいので、この家の人も眼を覚まし
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
(それがとうとう現実となった。還俗し、甲胄かっちゅうをつけ、合戦のにわに立つようになった)
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
館は混乱のにわとなり、歓楽の陣営が修羅の場と化してしまった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と、一散に一人の武士が乱闘のにわから走り出た。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)