執行とりおこな)” の例文
春の頃からひどく旱魃かんばつの打ちつづいた承安四年の事、清涼殿で雨乞あまごいが執行とりおこなわれたが、誰が祈祷きとうにあたっても、一滴の雨も降らなかった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
執行とりおこなわれていた一つの祭典の名としては少しく精確でないこと、さらに言うならば『古事記』などのように、ただ「嘗」という一字を書いても
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
憚っての深夜の会合。いずれ重大の相談事が執行とりおこなわれるに相違あるまいが、さてどういう相談事であろうか? 密議? もちろん! 謀反の密議?
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
又、引取人のないものは共同墓地へ埋めて、年に一度の供養法会くようほうえ執行とりおこなう事になっておりますので、この屍体も、そうした種類の一つと考えられるのであります。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
島路を彼方かれかたへ遣わしては如何いかゞとの仰せに助七は願うところとすみやかに媒酌を設け、龜甲屋方へ婚姻の儀を申入れました処、長二郎も喜んで承知いたしたので、文政五午年うまどし三月一日いちにちに婚礼を執行とりおこな
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
只清盛が一二三人果にんくわ大にして、親族氏族うからやからことごとく高き官位につらなり、おのがままなる国政まつりごと執行とりおこなふといへども、一二四重盛忠義をもてたすくる故、いまだときいたらず。汝見よ、平氏も又久しからじ。
かたちばかりの告別式を自分の手で執行とりおこなった。
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
いずれか一つ執行とりおこなうように……これさえお聴き入れくださるなら伊那と冠者の軍勢なんどたとえ百万押し寄せて来るともきっと打ち払ってお目にかけますと
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
忌日忌日の法事も若いのに似合わず念入りに執行とりおこなって、村中の仁義交誼こうぎを怠らないぶりを見せた。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
七 上郷村の民家の娘、くりを拾いに山に入りたるまま帰りたらず。家の者は死したるならんと思い、女のしたるまくら形代かたしろとして葬式を執行とりおこない、さて二三年を過ぎたり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
京師では大葬が執行とりおこなわれた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きたるべき生産の上から見れば、最も重要なる発端でありまた開始であって、御代始みよはじめの新嘗をとくに荘重に執行とりおこなわせられた最初の御趣旨も、またここにあったかと思われる。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
神事を執行とりおこなう人達で、先頭には杉右衛門が立っている。跣足はだし、乱髪、白の行衣ぎょうえ、手に三方さんぼうを捧げている。後につづいたは副頭領で岩太郎の父の桐五郎であった。手に松明たいまつを持っている。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それは私以外の人達が一人も気付いてお出でにならない……そうして同時にタッタ一人私だけを苛責いじめ、威かすために執行とりおこなわれた、世にも恐ろしい、長たらしい拷問ごうもんだったのですから……。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
世降よくだって恒例臨時の奉幣はしばしば絶え、これにかわって個々の祈願の奉幣のみがきそい進んだために、是が第二宗教の法会ほうえなどと混同して、次第に朝家みずからその祭典を執行とりおこなわせられるように
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そこで早速法王ヨハネ十二世は外交手段をふるい、盛儀を執行とりおこな
ローマ法王と外交 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)