垂氷たるひ)” の例文
黄袗くわうしんは古びてあかく、四合目辺にたなびく一朶いちだの雲は、垂氷たるひの如く倒懸たうけんして満山をやす、別に風よりはやき雲あり、大虚をわたりて、不二より高きこと百尺ばかりなるところより、これかざ
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
垂氷たるひとなりて一二寸づゝ枝毎えだごとにひしとさがりたるが、青柳あをやぎの糸に白玉をつらぬきたる如く、これにあさひのかゞやきたるはえもいはれざる好景かうけいなりしゆゑ、堤の茶店ちやみせにしばしやすらひてながめつゝ
世はようやく春めきて青空を渡る風長閑のどかに、樹々きぎこずえ雪の衣脱ぎ捨て、家々の垂氷たるひいつの間にかせ、軒伝うしずく絶間たえまなく白い者まばらに消えて、南向みなみむきわら屋根は去年こぞの顔を今年初めてあらわせば、かすおい
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
塔が島馬酔木あしびしみ立ち岩床に暁かけて凝る垂氷たるひこれ
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
大駿河おほするが裾野の家に垂氷たるひする冬きにけらし山は真白き
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
垂氷たるひは光り、無情の雪降る白きよるよ。