四五日しごんち)” の例文
四五日しごんちすると夫人が来る。そこで今度は二人してまた東西南北をけ廻った揚句のはてやはりチェイン・ローがいという事になった。
カーライル博物館 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
……ただ、もし、この頃も承りますれば、その上方の御老体は、今年当月も御湯治で、つい四五日しごんちあとにお立ちかえりだそうでござりますが。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
四五日しごんち前——」と言いかけしが、老爺じじいはふと今の関係を思いでて、言い過ぎはせざりしかと思いがおにたちまち口をつぐみぬ。それと感ぜし武男は思わず顔をあからめたり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
それから左の方に銀杏いちょうの樹が高く見える。それがつい四五日しごんち気の付かなかった間に黄色い葉が見違えるばかりにまばらに痩せている。私達はその下にも住んでいたことがあったのだ。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
けれども、徒手てぶらで行くのが面白くないんで、そのうちの事と腹の中で料簡をさだめて、日々にちにち読書にふけって四五日しごんち過した。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あっちこち聞きあわせると、あの尼様はこの四五日しごんち前から方々の帰依者きえしゃとこをずっと廻って、一々
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
四五日しごんちすると、うちの婆さんが少々心配を始めて、おくさんのおありるのに、夜遊びはおやめたがええぞなもしと忠告した。そんな夜遊びとは夜遊びが違う。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ちやましてゐるうちにひるになつたので、二人ふたり食事しよくじはじめた。小六ころくうつつてからこの四五日しごんち御米およね宗助そうすけのゐない午飯ひるはんを、何時いつ小六ころく差向さしむかひべることになつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
茶の間を済ましているうちにひるになったので、二人は食事を始めた。小六が引き移ってからこの四五日しごんち、御米は宗助そうすけのいない午飯ひるはんを、いつも小六と差向さしむかいで食べる事になった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
四五日しごんちそのままにして置いた机の上には、障子の破れから吹き込んだ砂が一面にかろくたまっている。すずりのなかは白く見える。高柳君は面倒だと見えて、ちりも吹かずに、上から水をさした。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それは外でもない。父と兄が、近来目に立つ様に、忙しそうに奔走し始めて、この四五日しごんち碌々ろくろくるひまもない位だと云う報知である。全体何が始ったんですと、代助は平気な顔で聞いてみた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)