可訝おかし)” の例文
可訝おかしいな、屋根裏が見えるくらいじゃ、天井の板がどこか外れたはずだが、とふと気がつくと、桟がゆるんでさえおりますまい。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大道で話をするのが可訝おかしければ、その辺の西洋料理へ、と云っても構わず、鳥居の中には藪蕎麦やぶそばもある。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いつに限らずだ。人が、がらりと戸を開けると、何だか大変なことでも見付かったように、どぎまぎして、ものをいうにも呼吸いきをはずまして、可訝おかしいだろうじゃないか。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
飯は済んだ、と云うのは、上野から電車で此地へ来る前に、朋達ともだち三人で、あの辺の西洋料理で夕飯を食べた。そこで飲んでね、もう大分酔っていたんです。可訝おかしくふらふらするくらい。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「何だい、鳴るじゃあないか、きゅうきゅういってやがら、おや、可訝おかしいな。」
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「蟹は甲らに似せて穴を掘る……も可訝おかしいかな。おなじ穴の狸……飛んでもない。一升入のひさごは一升だけ、何しろ、当推量も左前だ。誰もおきまりの貧のくるしみからだと思っていたよ。」
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
可訝おかしな顔をして出て来ようと思ったその(小使)でもなしに、車夫のいわゆるぺろぺろの先生、早瀬主税、左の袖口のほころびた広袖どてらのようなかすり単衣ひとえでひょいと出て、顔を見ると、これは
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一人のわかい方は、洋傘こうもりを片手に、片手は、はたはたと扇子を使い使い来るが、扇子面に広告の描いてないのが可訝おかしいくらい、何のためか知らず、しぼり扱帯しごきせなかに漢竹の節を詰めた、ステッキだか、むちだか
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それにしても本箱の中は可訝おかしい、とよくよく聞き澄しても、間違いでないばかりか、今度は何です、なお困ったのは、その声が一人でない、二人——三人——三個みッつの本箱、どれもこれもうなっている。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
手にきずをつけただけ、いきおいで壊したから、火はそれなり、ばったり消えて、何の事もありませんでしたが、もしやの時と、みんなが心掛けておきました、蝋燭ろうそくけて、跡始末にかかると、さあ、可訝おかしいのは
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「烏にしてみれば——烏にしてみれば、は可訝おかしいけれども。」
「何でしょう。この小使は、また可訝おかしなものじゃないの、」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これに目鼻のつかないのが可訝おかしいくらい。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
可訝おかしく、天鵞絨びろうどの襟もふっくり高い。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
可訝おかしいな。」
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)