古館ふるやかた)” の例文
わたしはまた関守さんを相手に、この古館ふるやかたを新しくするいろいろの設計や、田畑の開墾や、人の出入りなどに気を配らなければなりませんから
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
狐狸こりでも住みそうな、この古館ふるやかたのしいんとしていることはどうだ。も見えぬし、犬すらもここにはいないとみえる。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この古館ふるやかたのまずここへ坐りましたが、爺さんは本家へ、と云って参りました。黄昏たそがれにただ私一人で、これから女中が来て、湯を案内する、あがって来ます、ぜんが出る。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それは別荘というよりも、荒野の中の一つであり、わすれ去られた古砦であり、人の住居すまいというよりも、死の古館ふるやかたといった方が、ふさわしいように思われた。すでに刎ね橋はひき上げられていた。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
たちばなの昧爽時かわたれどき古館ふるやかた
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
橘のかはたれ時や古館ふるやかた
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
甥のやったその手に限ると、兵をやって、姫を奪い、さる女院の古館ふるやかたかくまって、夜ごと夜ごと、通い初めていたのだった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
京都二条の外れにあたって、宏大な古館ふるやかたが立っていた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
橘のかはたれ時や古館ふるやかた
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
そこの本郷山に、以前のままな古館ふるやかたがある。義経は貢ぎの荷駄や五百騎と共にとどまって、ひたすら鎌倉から二度目の急使が訪れるのを待っていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
水をみ、使いに走る童僕わっぱまでがそれを習うようにいたって、この古館ふるやかたは何か、燦然さんぜんたる和楽につつまれているかのように、他人からもうらやましく見えるのであった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところが、残っていたのは、何もない豊田の古館ふるやかたと、去勢されたような弟たちだけだった。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
悪いことつづきの古館ふるやかたに、じつに、将門帰郷以来の、ただ一つの吉事だった。それだけに、召使は、さとの住民にも、すぐ吹聴ふいちょうしてあるき、全部落のよろこびとなって、門前は、賑わい立った。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さすがにその規模きぼは義貞が私邸にもらった二条烏丸からすま古館ふるやかたの比ではない。
『どうだ。……水薬師の古館ふるやかたとは、くらべものになるまいが』
「義助、ここの古館ふるやかたも、このままにはしておかれんな」