収拾しゅうしゅう)” の例文
「いかんせん、かかることは、機密に運ばねば成り難い。事洩れては、全軍に不穏をよび、はては狂気の沙汰になる。収拾しゅうしゅうがつかぬ」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その結果は連盟はバラバラになって、収拾しゅうしゅうできない混乱こんらんにおちいってしまう、それはおそろしいことだ。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
いたずらなる狼狽ろうばいは、国難をして遂に収拾しゅうしゅうすべからざる状態に導くものである。皇国こうこく興廃こうはいは諸君の双肩そうけんかかれり、それ奮闘努力せよ。右布告す。昭和十×年五月十日。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かすかな燈を囲んで、一同はこの敗戦の収拾しゅうしゅうを凝議した。それを理性の正しい判断に求めるとき、光秀も、もう策なきことをさとった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これが手おくれとなりますと、お手持の軍は失い、朝廷からは譴責けんせきをうけ、人民は足もとから騒ぎだすなど、収拾しゅうしゅうもつきますまい
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もはや、兵法大講会へいほうだいこうえは、この意外いがい椿事ちんじのため、その神聖しんせい森厳しんげんをかきみだされて、どうにも収拾しゅうしゅうすることができなくなった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ご家老。おはやくお臨み下さい。ご評議の席は、いつまでらちもなく、ただそしぐちや争論ばかりで収拾しゅうしゅうもつきません。殿にも、唯ひたすら、あなた様だけを
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こう極端になってはもう物頭ものがしらたちのおさえもきかない。帷幕いばくからの厳命も、部将にかせておいたのでは、到底収拾しゅうしゅうはつくまいと、勝家は思い極めたものとみえる。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かかる時代を収拾しゅうしゅうする大器量は、かならず天のお選びによって、どこかに用意されてあるものです。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
退しりぞけ、尊氏と和して、時局を収拾しゅうしゅうすべきであると、賢者けんじゃ顔して、堂上へ献言した、おかしげな小才子も、先頃にはあったという。ははははは。河内どのには、何と思われるな
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
万一にも、ここの皇居に混乱が生じましては、はや収拾しゅうしゅうもつかぬことに立ちいたりますれば
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その代りには、本庄鬼六も、収拾しゅうしゅうのつかない泥沼から、救われたような気はしたであろう。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たのむべからざるものを恃んで、毛利方に捨てられた伊丹の城は、その城主村重からまた捨てられて残された将士の心は、まったくばらばらに離れ、いまは収拾しゅうしゅうもつかぬ弱体に化してしまった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)