すぐ)” の例文
それはひとつにはモーナルーダオというすぐれた統率の才がいたからではあるが、ひとつには蕃人の智能が驚くほどすすんできたためである。
霧の蕃社 (新字新仮名) / 中村地平(著)
ロシア及びフランスのそれぞれ最もすぐれた最も深い短篇作家も、共に、スティヴンスンと同年、或いは、より若く死んでいるではないか、と。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
あゝなつかしの御嶽! 二三日來われはいかにその翠鬟すゐくわんの美しきとその姿のすぐれたるとを指點したりけむ。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
順天では朝鮮靴、七宝の指輪、刺繍ししゅうの類など。中でも靴は形がすぐれ細工も見事であった。惜しいことに今は一般にこの種のものが廃れ、到るところ護謨ゴム靴に代られている。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
効目ききめすぐれていたから、薬がよく売れた、——そんな莫迦ばかげたことは、お前も言うまい。
勧善懲悪 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
人物経済眼のすぐれたものと買ってやってもさしつかえありますまい。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
運命、人生——かつて芳子に教えたツルゲネーフの「プニンとバブリン」が時雄の胸にのぼった。露西亜ロシアすぐれた作家の描いた人生の意味が今更のように胸をった。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
昔から風景がすぐれていることで名高いのであるが、らに春の季節になると、その南の島には珍しい桜の樹が、緑の山々を背景に、その花ばなの見事さを高台いっぱいに誇る。
霧の蕃社 (新字新仮名) / 中村地平(著)
祖父祖母のやうなすぐれて美しい性質は夫婦とも露ばかりも持つて居らなかつたので、母方の伯父をぢといふ人は人殺をして斬罪ざんざいに処せられたといふ悪い歴史を持つて居るのであつた。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
そのことで彼は懊悩おうのうしていた。その過去と、彼が頭脳と、勇武とにすぐれている事実とから、彼を措いてはこの組織的な行動の統率者たり得る人物は無い、と人々は断じたのである。
霧の蕃社 (新字新仮名) / 中村地平(著)
尾谷川の閃々きら/\と夕日にかゞやく激湍げきたんや、三ツ峯の牛のたやうに低く長くつらなつて居る翠微すゐびや、なほ少し遠く上州境の山が深紫の色になつてつらなわたつて居る有様や、ことに、高社山かうしやざんすぐれた姿が
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)