半間はんげん)” の例文
小座敷ながら半間はんげんの床に掛物があり、隣りとの襖を隠すように、二枚折りの小屏風を立て、四角な桐の火鉢には火がおこっていた。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
半間はんげん程の、曲りくねった細い通路の両側には、陽をさえぎって、見上げるばかりの丈余じょうよ生垣いけがきだ。生垣と云っては当らぬ。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
お末は白い前掛で手を拭き拭き出て来て、暗い六畳の半間はんげんの戸棚から子供達の寝間着の皆はいつた中位ちうぐらゐな行李を引き出した。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
自分はつと立って嫂のうしろへ廻った。彼女は半間はんげんとこを背にして坐っていた。室が狭いので彼女の帯のあたりはほとんど杉の床柱とすれすれであった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
よく見るとその半間はんげんの押入の襖と柱との合せ目が、どちらか歪んでるせいか、上の方が五分ばかりすいていた。掌をかざしたが、別に隙間風がはいってる様子もなかった。
白血球 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
その非常梯子は、チャンウーの店のすぐそばをとおっており、その間、半間はんげんとはなれていない。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おしょさんの家は格子戸の中が半間はんげんのたたきに二畳、となりに窓の部屋、中の間の八畳にずっと戸棚があって、一方の壁に箪笥たんすがならび、その上に一ぱい細かいものが飾られてある。
宗助そうすけ玄關げんくわんから下駄げたげてて、すぐにはりた。えんさき便所べんじよまがつてしてゐるので、いとゞせま崖下がけしたが、うらける半間はんげんほどところ猶更なほさら狹苦せまくるしくなつてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)