ゆす)” の例文
『そんなら、君、あの瀬川丑松といふ男に何処どこか穢多らしい特色が有るかい。先づ、其からして聞かう。』と銀之助は肩をゆすつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
八蔵は肩をゆすってせせら笑い
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一同はお仙を取囲とりまいて種々なことを尋ねて見た。お仙は混雑した記憶を辿たどるという風で、手を振ったり、身体からだゆすったりして
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その後戦争が始まってから植物園に近い教授の住居をたずねた時、岸本の方からその事を言出して見ると、教授は仏蘭西人の癖らしく肩をゆすって
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「皆なの丹精で、これまでに為たわい。旦那が出て了った後で、私がお前さんの家から帰って来た時なぞは……眼も当てられすか」とお種は肩をゆすった。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
た繰返した。袈裟治は襷を手に持つて、一寸小肥りな身体からだゆすつて、早く返事を、と言つたやうな顔付。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
省吾はそろ/\眠くなつたと見え、姉に倚凭よりかゝつたまゝ、首を垂れてしまつた。お志保はいろ/\に取賺とりすかして、ゆすつて見たり、私語さゝやいて見たりしたが、一向に感覚が無いらしい。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「私共の祖母さんが太夫さんなんですトサ」と林の細君は肥満した身体をゆすりながら笑った。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「B君は寒いでしょう。御免こうむって外套がいとうを着給え」と西は背広を着た記者に言ってみて、自分でもすこし肩をゆすった。「どうも、寒い処だねえ——こんなじゃ有るまいと思った」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
達雄は胡坐あぐらにしたひざを癖のようにゆすぶりながら、「近頃の若い人には、大分種々な物を書く人が出来ましたネ。文学——それも面白いが、きまった収入が無いのは一番困りましょう」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この教員室の空気の中で、広岡先生は由緒いわれのありそうな古い彫のある銀煙管ぎんぎせるの音をポンポン響かせた。高瀬は癖のように肩をゆすって、甘そうに煙草をくゆらして、楼階はしごだんを降りては生徒を教えに行った。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
彼は幅の広い肩をゆすって、黙って自分の部屋の方へ行って了った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それこそ源は人を見下げた目付をして、肩をゆすって歩く。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「それですよ」と輝子はすこし肩をゆするようにして
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と言って主婦は仏蘭西人らしく肩をゆすって見せた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と玉木さんは坐り直して肩をゆすった。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)