動静ようす)” の例文
旧字:動靜
がんりきが夜更けて再び忍んで行った時に、かの部屋の燈火あかりは消えていました。障子の外で暫らく動静ようすうかがっていたがんりき。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「ですからお雪さんだって、あなたの動静ようすを遠くから、あゝして見ているんですよ。かたづいてなんかいやしませんよ。」
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
そして常に目指す敵の動静ようすを見張りながら、味方のこれに対する構えを変化させて、持久戦をつづけたのでした。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
耳と眼をジッと澄まして動静ようすをうかがいますと、この森は内部なかの方までかなり大きな樹が立ち並んでいるらしく、星明りに向うの方が透いて見えるようです。
死後の恋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
この頃の家内かない動静ようすを詳く叔父の耳へ入れて父親の口からとくとお勢に云い聞かせる、という一策で有る。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
さて探偵も届いたか、いよ/\今夜は福澤を片付けるとうので、忍び/\に動静ようすうかがいに来た、田舎の事で外廻りの囲いもなければ戸締りもない、所が丁度ちょうどそのは私の処に客があって
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そうしてじっと階上うえ動静ようすき耳を立てていると、はたして柳沢が大きな声で何かいっているのが聞える。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
廊下を忍び足に、もとの室のところまで来ると、障子の外に立って中の動静ようすに気を配るようでしたが
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ただ左右りょうほうの耳だけがハッキリ聞こえておりますので、それをタヨリに部屋の中の動静ようすを考えておりますところへ、聞慣れた近所の連中の声がガヤガヤと聞こえて来ます。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
取分けてお勢が母親に孝順やさしくする、折節には機嫌きげんを取るのかと思われるほどの事をも云う。親も子もめるかたきは同じ文三ゆえ、こう比周したしみあうもそのはずながら、動静ようするに、ただそればかりでも無さそうで。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
動静ようすいかにとうかがっていると、この物々しい一行は、玄関へかかると、恭しく、先手が承って捧げた三宝を式台に置き、おごそかにその錦の覆いを払って、それから、一同はこれより三歩さがって
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
以前から儀作の動静ようすうかがっていたらしい狂少年、福岡県早良さわらめいはま町一五八六番地農業、呉八代の養子にして同女の甥に当る一郎(二〇)は突然、その鍬を拾い上げて、かたわらに草を植えていた狂少女
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
総てこれ等の動静ようすは文三もぼ察している。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)