がい)” の例文
旧字:
唯一の憧れであった蕗子が死んでみれば放浪に出ることなんか意義のないことで、免訴になったところで何のがいがあるでしょう。
流転 (新字新仮名) / 山下利三郎(著)
旅空かけて衣服きものをどうするだ、とわし頼まれがいもなかったけえ、気の毒さもあり、急がずば何とかで濡れめえものを夕立だ、と我鳴がなっった時よ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
不愍ふびんな者どもよ、こういう憂き目を見すること、戦乱の世の常といえ、筑前、民の上に立ちながら、民に頼まれがいもないこと。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれどもそうして書箱に、そんな種々いろんな書籍があって、それを時々出して見ていれば、其処に生きがいもあれば、また目的あてもあるように思えた。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「私二三年東京で働いてみようかしら」お島は何か働きがいのある仕事に働いてみたい望みが湧いていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
お世話がいがあったと思って居ました、処がアヽ云う訳になったもんですから、お内儀さんが、此金これで堺屋のしきいまたがせない様にして呉れと仰しゃって、金子かねをお出しなすったから
「君も引受けがいがある」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「いえ、その、お古い処を……お馴染がいでございまして、ちょっとお見立てなさいまし。」
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
気強く生まれついていたので、なまじい互いに知り合った村で、みじめな姿を見られているよりも、見ず知らずの他国の方がずっと自由であり、初めて働きがいのあるような気がするのであった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
無念の情は勃然ぼつぜんとして起これり。繊弱かよわ女子おんなの身なりしことの口惜くちおしさ! 男子おとこにてあらましかばなど、言いがいもなき意気地いくじなさをおもい出でて、しばしはその恨めしき地を去るに忍びざりき。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「……だそうじゃ不可いけないよ、冷淡だよ、友達がいのない。」
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)