出行いでゆ)” の例文
先刻さきに赤城得三が、人形室を出行いでゆきたる少時しばらく後に、不思議なることこそ起りたれ。風も無きに人形のかずき揺めき落ちて、妖麗あでやかなる顔のれ出でぬ。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
貫一は寄付よせつけじとやうに彼方あなたを向きて、覚めながら目をふさぎていと静にしたり。附添婆つきそひばばの折から出行いでゆきしをうかがひて、満枝は椅子をにじり寄せつつ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
其時の彼れが顔附は何処どことも無く悪人のそうを帯び一目見るさえこわらしき程なりき、是さえあるに或午後は又彼れが出行いでゆかんとするとき其細君がしきいもとまで送り出で
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
其処そこで老人は程遠からぬ華族大井家の方へと廻るとて出行いでゆきたるに引きちがえてお政は外から帰って来た。老人と自分とが話しているに質屋に行って来たのである。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
一同いちどう次第しだいはひる。ヂュリエットと乳母うばのこりて、出行いでゆきゃく見送みおくる。
とこうするうち、高田は殺され悪僕二人は酒を飲みに出行いでゆきたれば、時分は好しと泰助は忍びやかに身支度するうち、二階には下枝の悲鳴しきりなり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見る間に出行いでゆく貫一、咄嗟あなや紙門ふすまは鉄壁よりも堅くてられたり。宮はその心に張充はりつめし望を失ひてはたと領伏ひれふしぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
さては出行いでゆきし恨も忘られて、二夜三夜ふたよみよとほざかりて、せめてその文を形見に思続けんもをかしかるべきを。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と板敷に投出せば、(ちょいとこさ)は手に取りて、高帽子をかぶるとひとしく、威儀を正して出行いでゆきたり。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
翌日早朝、犬はいずくにか出行いでゆきて、半日見えず、午後に到りて帰りきたりぬ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
手早く髪をつかねてくしにておさえ、土瓶片手に出行いでゆきけり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一人の父は納豆を売りに朝く起きて出行いでゆきぬ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)