かぶり)” の例文
熊野詣くまのもうでには、なぎの木を折って、髪やかぶりにかざして帰る風俗があるから、ここでも杉の葉をそうするような風習があったのだろうか。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いよいよ身請けという段になって、にわかに浦里がかぶりを振り、彼の望みに応じようともしない。酒のまずい原因である。
紅白縮緬組 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
お島はじっとり汗ばんだ体に風を入れながら、鬱陶しいかぶりものを取って、軽い疲労と、健やかな血行の快い音に酔っていた。もも臀部でんぶとの肉にだるい痛みを覚えた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
お米は舌を食い切っても爺の膝を抱くのは、いやかぶりをふり廻すと申すこと。それは私も同一おんなじだけれども、罪のないものが何をこわがって、煩うということがあるものか。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そう云って彼女は、私の言葉が終らないうちに激しくかぶりを振るのでした。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
かぶりてる二本ふたもと
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
そのわかい方は、納戸なんど破障子やぶれしょうじ半開はんびらきにして、ねえさんかぶりの横顔を見た時、かいな白くおさを投げた。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私がこう云って尋ねると、彼は頻りにかぶりを振って
金色の死 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と、かぶりを振ったのは、羅門塔十郎であった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)