かしず)” の例文
旧字:
もっとも一の御台さまとして諸人に敬いかしずかれていらっしゃいましたから、うわべは人の羨みそうなお身の上でござりましたけれども、御夫婦とはたゞ名ばかりの
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
容姿ようしすぐれて美しく才気あり万事にさとせいなりければ、誘工ゆうこうの事すべてお政ならでは目がかぬとまでにたたえられ、永年の誘工者、伝告者として衆囚よりうやまかしずかれけるが
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
むこうの隅に、ひな屏風びょうぶの、小さな二枚折の蔭から、友染の掻巻かいまきすそれて、ともしびに風も当たらず寂莫せきばくとしてもの寂しく華美はでな死体がているのは、蝶吉がかしずく人形である。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかるにその実状をた公平な論者は、古く既にこの神とかしずかるる蛇が毒蛇どもを殺し、田畑に害ある諸動物を除く偉功を認めかく敬わるるは当然だといった(アストレイ、三の三七頁)。
これはラサ府に入って後の実地について充分に話することにいたしましょうが、何にしても、そういう人にかしずかれてお茶を戴き御膳をよばれるというのですから、随分嫌な事は沢山あります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「さようなことは、ご注意がなくても分っておるが、何よりも、魏王の御位へ太子をかしずき立て奉ることが先でなければならぬ。けれど如何せん、未だにそれを許すとの勅命が朝廷からくだっていない」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここに摩利支天を安置し、これにかしずく山伏のすまえる寺院を中心とせる、一落いちらく山廓さんかくあり。
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
母や自分を立派な城に住まわせて大勢の腰元をかしずかせてくれ、大名のお部屋様やお姫様として幸福な月日を送らせて下すった有難いお人には違いなかったが、親としての親しみを感ずるのには
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それからは気にはりが出て、稽古事も自分で進み、人には負けぬ気で苦労も気にせず、十七の年紀としまでり通したが、堅いつぼみも花になって、もうあとへ、自分を姉さんといってかしずくのが出来て
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)