内方うちかた)” の例文
「これは、まことに粗末な品でござりますれど、能登守様のお内方うちかたへ差上げ下さいまするよう、主人からの言いつけでござりまする」
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
どうだかね、わし内方うちかたへ参ったはちいとのだし、雨に駈出かけだしても来さっしゃらねえもんだで、まだ帰らっしゃらねえでごぜえましょう。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「駒は内方うちかたの召使やおまへんか。女衆をなごしだすで、女中さんだツせ。」と、千代松は低い聲をして噛んで含めるやうに言つた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
お姫さまにも、お内方うちかたも、みな様お変りはございませぬ。そして、あとのお屋敷の始末。下婢しもめたちから、うまやの馬まで、それぞれ、よいように、片づけ終わりました。
(首を振り夢中になり唄う)これは世間の女房の名寄なよせ。おきさき様には政所まんどころ、北の方には御台みだい様、奥方ご新造ご内室、おかみさんにはお内方うちかた嬶左衛門内かかあざえもんうちの奴(坐り込む)馬鹿だね、あははははは。
瞼の母 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
……そいでまアお氣の毒だすが内方うちかたへお頼みしに來ましたんや。總代さんもいづれ後から來やはりまツしやろ。
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「はい、お内方うちかたばかりでございます」答えつつ、小侍は、腰をかがめながら慈円の前を、つつと抜けて
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(濁れるわらい)いや、さすがは姫路お天守の、富姫御前の禿かむろたち、変化心へんげごころ備わって、奥州第一の赭面あかつらに、びくともせぬは我折がおれ申す。——さて、あらためて内方うちかたへ、ものも、案内を頼みましょう。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのうえ、いかに見せしめとはいえ、「——宮将軍内方うちかたの兵」と、高札にまで公示したので、殿ノ法印が怒ッたのはもちろん、宮もそのときは、じつにいやなお顔をした。
私たちの覚えたのは、内方うちかた袖方そでかた御手おんてに蝶や花、どうやどうんど、どうやどうんど、一丁、二丁、三丁、四丁ッてもう陽気なことばかりで、訳がわからないけれど、貢さんのはまた格別だねえ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
意見ならよいが、よも煽動せんどうなどではあるまいの。何か、源家の系図書のような物を、お内方うちかたから山へひそかに送ったお覚えはないか。……何せい父の相国にも激怒しておらるる折だ。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
内方うちかたでおっしゃいます。」
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「もしや、お輿の上の女性にょしょうは、足利殿のお内方うちかたではおざらぬか」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まず、お内方うちかたへ」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)