先方様さきさま)” の例文
旧字:先方樣
とうとう平あやまりのこっちへこみ、先方様さきさまむくれとなったんだが、しかも何と、その前の晩気を着けて見ておいたんじゃアあるまいか。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どうか先方様さきさまへ私の秘密を告げて、結婚を差し控えて下さいと、涙を流して頼みましたけれど、今になってはどうにも仕様がないではないかという
秘密の相似 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
「まあ、それはほんとうに珍しい、またよい人にお目にかかりました。先方様さきさまは何とおっしゃいました」
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
母「済まないと云って無闇に人をつと云う法がありますか、先方様さきさまは素直に当家へ病人を引取って看病さえしてくれゝば宜しいと云うから、どうも仕方がないわな」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「私の様な者、とても御武家様へはねえ……こちらで置いて頂きたくッても、先方様さきさまでねえ」
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
書けとおつしやれば起証でも誓紙でもお好み次第さし上ませう、女夫めをとやくそくなどと言つても此方こちで破るよりは先方様さきさまの性根なし、主人もちなら主人がこわく親もちなら親の言ひなり
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのおいだ、そのめいだ、またその兄だ、娘だ、兄のだ、弟の嫁だッて、うじゃうじゃしている……こっちが何ものだか職業も氏素性も分らなけりゃ、先方様さきさまも同然なんだから、何しろ
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私ら風情で大家たいけ嬢様じょうさんと一緒になろうなんかッてえのは間違っている……こりゃア今切れた方が先方様さきさまのお為と思ったもんだからね、鳶頭の言うなり次第になって目を眠っていたんでげす
がりびたのがまへ鶏冠とさかごとくになつて、頷脚えりあしねてみゝかぶさつた、おしか、白痴ばかか、これからかへるにならうとするやうな少年せうねんわしおどろいた、此方こツち生命いのち別条べつでうはないが、先方様さきさま形相ぎやうさう
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
五分刈ごぶがりびたのが前は鶏冠とさかのごとくになって、頸脚えりあしねて耳にかぶさった、おしか、白痴ばかか、これからかえるになろうとするような少年。わしは驚いた、こっちの生命いのちに別条はないが、先方様さきさま形相ぎょうそう
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
点火頃ひともしごろに帰って来て、作、喜べと大枚三両。これはこれはとしんから辞退をしたけれども、いや先方様さきさまでも大喜び、実は鏡についてその話のあったのは、御維新ごいっしんになって八年、霜月の十九日じゃ。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)