兄様あにさま)” の例文
旧字:兄樣
兄様あにさまさえ好くやってくれたら、私は何事なんにも言うことは無い——私は今、兄様の為に全力を挙げてる——一切の事はそれで解決がつく」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ウムお前の兄様あにさまは新五郎様と云ってね、親父様おとっさまはもうお酒好でねえ、お前が生れると間もなく、奥様は深い訳が有ってお逝去かくれになり、其の以前から、お熊と云う中働なかばたらき下婢おんなにお手が付いて
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それ兄様あにさまのお帰りと言へば、いもとどもこわがりてれ物のやうに障るものなく、何事も言ふなりの通るに一段と我がままをつのらして、炬燵こたつに両足、ゑひざめの水を水をと狼藉らうぜきはこれにとどめをさしぬ
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「お前さんの兄様あにさまをです」
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
わしが養子に来ぬ前から照の心掛は実に感心、云わず語らず自然と知れますな、と申すは昨年霜月三日にお兄様あにさまは何者とも知れず殺害せつがいされ、如何いかにも残念と心得、御両親は老体なり、武士の家に生れ
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
おもふまじ/\あだこゝろなく兄様あにさましたしまんによもにくみはしたまはじよそながらもやさしきおことばきくばかりがせめてもぞといさぎよく断念あきらめながらかずがほなみだほゝにつたひて思案しあんのよりいとあとにどりぬさりとてはのおやさしきがうらみぞかし一向ひたすらにつらからばさてもやまんを
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)