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偃
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ばひ
おつぎは
足速に
臺地の
畑から
蜀黍の
葉のざわつく
小徑を
低地の
畑へおりて
漸くのことで
鬼怒川の
土手へ
出た。おつぎは
四つ
偃に
成つて
芝に
捉りながら
登つた。
彼は
膝がしらで
四つ
偃に
歩きながら
座敷へあがつて
財布を
懷へ
捩ぢ
込んでふいと
出た。
彼は
風呂敷包を
持つて
歸つた。
彼が
戸口に
立つた
時は
家の
内は
眞闇で
一寸は
物の
見分もつかなかつた。