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倚子
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ゐす
『なあに、
柳川君には
片附けるやうな
荷物もないのさ。』と
濱島は
聲高く
笑つて『さあ。』とすゝめた
倚子によつて、
私も
此仲間入。
私は
何氣なく
倚子より
離れて、
檣樓に、
露砲塔に、
戰鬪樓に、
士官水兵の
活動目醒ましき
甲板を
眺めたが、
忽ち
電氣に
打たれし
如く
躍上つたよ。
吾等の
前に
立つて、
武村兵曹と
私との
顏を
眺めたが、
左迄驚く
色がない、
目禮をもつて
傍の
倚子に
腰打ち
掛け、
鼻髯を
捻つて
靜かに
此方に
向直つた。