何間なんげん)” の例文
立てきった障子しょうじにはうららかな日の光がさして、嵯峨さがたる老木の梅の影が、何間なんげんかのあかるみを、右の端から左の端まで画の如くあざやかに領している。
或日の大石内蔵助 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それからぜんたいこの運動場は何間なんげんあるかというように、正門から玄関まで大またに歩数を数えながら歩きはじめました。
風の又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そこに広げられた道路をおよそ何間なんげんと数え、めずらしい煉瓦れんが建築の並んだ二階建ての家々の窓と丸柱とがいずれも同じ意匠から成るのをながめた。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
傷負ておいの狐は、すこし跛行びっこをひく気味で、時々、前へのめる様子なので、しめたと思って、近づくと、やにわに神通力を出して、何間なんげんも先へ跳んでしまう。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
以前菊人形きくにんぎょうの名所だった所で、狭かった通りが、市区改正で取拡げられ、何間なんげん道路とかいう大通になって間もなくだから、まだ大通の両側に所々空地などもあって
D坂の殺人事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
二日目も石塊ばかり出た。三日目も同様であった。何間なんげん掘り下げても何も出なかった。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
成程なるほどな、のない人が始めていた時には、何尺なんじやく何間なんげんわからんで、さきへ一たいものえるとふが、めうなもんだね、これ薬師やくしさまのおだうだよ。梅「へえゝ、おだうで、これは……。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
そこは北向きで、仄暗ほのぐらくてまた、冷たかった。柱なし何間なんげん四面という板壁板床である。わずかに武者窓からす光が、淡い縞目しまめの明りをそこに落している。
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)