他言たごん)” の例文
神仙は尊に向って、「十年間はこのことを他言たごんしてはならん」と云った。尊はそのめいを守って十年過ぎても何人たれにも云わなかった。
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
やむを得ず、少し語勢を変えて「いいさ。何でも話すがいい。ほかに誰も聞いていやしない。わたしも他言たごんはしないから」とおだやかにつけ加えた。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
皆さんもこれからは、兵隊と同じに、陣地の中へ這入って仕事をするのであるから、陣地の様子は、絶対に、他言たごんしないように、充分に注意してほしい
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
しかしそれには生死を問わず、他言たごんしない約束が必要です。あなたはその胸の十字架くるすに懸けても、きっと約束を守りますか? いや、——失礼はゆるして下さい。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
よかろう、ではこのことを、他言たごんするような不人情者は、この孔雀長屋くじゃくながやからお構いだぞ。——というので
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わしは人から聞いたはなしは何事によらず他言たごんはしない。むかし細井平洲ほそいへいしゅうという先生は人の手紙を見るとその場で焼いてしまったという事だ。心配せん方がよい。」
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その新動力というのは、ちょっと他言たごんはばかるが、要するに、物質を壊して、物質の中に貯わえられている非常に大きなエネルギーを取り出し、これを利用するのである。
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
翌日も再びお由に注意して、かならず他言たごんするなと戒めた。三人は後をも見ずして逃げて来たのであるから、かの少女が自分たちを見つけたかどうだか一向に判らなかった。
半七捕物帳:55 かむろ蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
やぶらするのも氣の毒千萬私しも今迄けつして他言たごんは致す間敷まじとは思ひしがお前が私の言葉を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
他言たごんしては不可いけない、ごく祕密ないしよに、とふやうなことなんですわね。」
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「もし君が他言たごんしないと云う約束さえすれば、その中の一つくらいはらしてあげましょう。」
西郷隆盛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「今話したこと——なにせよ、阿波の大秘事でござる。必ずとも、他言たごんしてくれては困る」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こいつは他言たごんしてもらっちゃ困る。お前さんだから、信用してうちあけるんだが——」
東京要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ついてはどうか呉々くれぐれも、恩人「ぽうろ」の魂のために、一切他言たごんつつしんで下さい。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それから、最前渡した船切手、あれを落さぬようにな、よいか、また大阪へまいっても、御当家のことやらざることを他言たごんしてはならぬぞ。宅助、そちにも何かの注意を頼んでおくぞ
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、一同へ他言たごんを封じて
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
他言たごんしてくれるな」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)