不精髯ぶしょうひげ)” の例文
三十七八——不精髯ぶしょうひげに顔半分を包んだような、洗いざらしの半纏はんてん一枚の与八は、何もかもベラベラとしゃべってしまいそうです。
面は黒疱瘡くろぼうそうのあとでボツボツだらけだし、鼻はひしげているし、ひげは髯というよりも、短い不精髯ぶしょうひげでいっぱいだ。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
細面でせぎすな彼女の父は、いつでも青白い不精髯ぶしょうひげを生やした、そしてじっと柔和な眼をすえて物を見やっている、そうした形でおぬいには思いだされるのだった。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
が、しかし、その時のは綺麗な姉さんでも小母さんでもない。不精髯ぶしょうひげ胡麻塩ごましお親仁おやじであった。と、ばけものは、人のよくいて邪心を追って来たので、やさしひと幻影まぼろしばかり。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その隣りの寝台には、せこけた不精髯ぶしょうひげを生やした五十がらみの親爺おやじがいて、息子らしい若者が世話をしていた。おすぎは若者が溲瓶しゅびんをさげて部屋を出て行く姿をなんとなく目にとめた。
夕張の宿 (新字新仮名) / 小山清(著)
まが唐桟とうざんの袖口がほころびて、山の入った帯、少し延びた不精髯ぶしょうひげ——叔母さんが見たら、さぞ悲しがるだろうと思う風体でした。
どれもこれも、薄ぎたなくて、不精髯ぶしょうひげやして、ごもに尺八一本持って歩いていた。——中には本格的に鈴を振って、普化禅師ふけぜんじをまねて凛々りんりん遊行ゆぎょうしていた者がないこともなかったが。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不精髯ぶしょうひげも大分のびた。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あんな洒落者しゃれものが、死顔を見ると不精髯ぶしょうひげだらけ、その上、白髪染が流れ落ちて、小鬢こびんが真っ白だ——四十になったばかりの孫右衛門さんに白髪があろうとは
粗野な窮惜大きゅうそだいとして終始し、——くしけずらぬ獅子の髪、烱々けいけいたるわしの眼、伸び放題の不精髯ぶしょうひげ衣嚢かくし一杯に物を詰めて、裏返しになった上着、底のいたんだくつ——そういった姿でウィーンの内外を横行し
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)