“丁(ちよう)” の例文
「は?」彼は覚えず身を回(かへ)して、丁(ちよう)と立てたる鉄鞭に仗(よ)り、こは是(これ)白日の夢か、空華(くうげ)の形か、正体見んと為れど、酔眼の空(むなし)く張るのみにて、益(ますま)す霽(は)れざるは疑(うたがひ)なり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
丁(ちよう)と中(あた)りて痿(ひる)むその時、貫一は蹶起(はねお)きて三歩ばかりも逭(のが)れしを打転(うちこ)けし檳榔子の躍(をど)り蒐(かか)りて、拝打(をがみうち)に下(おろ)せる杖は小鬢(こびん)を掠(かす)り、肩を辷(すべ)りて、鞄(かばん)持つ手を断(ちぎ)れんとすばかりに撲(う)ちけるを
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
満枝は金煙管(きんぎせる)に手炉(てあぶり)の縁(ふち)を丁(ちよう)と拍(う)ちて、男の顔に流眄(ながしめ)の怨(うらみ)を注ぐなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)